…ん?

太陽に雲でもかかったのか、と上を見上げると。

「…」

遥か先からこちらを見下ろす、超巨大な巨人アリスの顔と、目が合った。

…心臓、止まるかと思った。

…俺の思ってたアリスと違う。
 
さっきまで俺達がいた世界と違って、俺達が小さくなってるんじゃない。

アリスが、規格外にデカ過ぎるのだ。
 
聞いてないぞ。こんな巨人アリス。

あまりに予想外なアリスに驚いて、一同ポカンとしてしまったが。

アリスはそんなことには構わず、俺達の身長より遥かに太い腕を伸ばし。

「ひぇっ。ひょえぇぇぇ〜っ!!」

まるで豆粒でも掴むように、指でシルナを摘み上げた。

「シルナ!」

「潰される〜っ!!」

シルナはじたばたしながら、叫び声をあげたが。

当然、アリスはそんなことに耳を貸さなかった。

蚊を潰すように、プチッと潰してしまうつもりなのかと思ったが。

アリスは何故か、シルナをテーブルの上の皿に、ポイッと乗せた。

…??

「ふぇっ。し、死ぬかと思った…!」

皿の上で、がばっと起き上がろうとしたシルナだったが。

アリスは、テーブルの上にあったティーポットのような容器を手に取り。

「あばばばばば」

皿の上に横になったシルナの上に、ポットの中のいちごソースを、だばだばと振りかけた。

…シルナが、味付けされてる。

「ど、どっちかと言うと、私はチョコソースの方が…。あっ、でも美味しい。ちょっと舐めてみたら美味しい!」

意外と余裕そうなシルナである。

味付けされてるのに。

何でシルナが皿に乗せられて、いちごソースをぶっかけられているのか…。

いきなりの急展開で、訳が分からな…、

「…!!」

いちごソースまみれのシルナを見て、俺ははたと気がついた。

…まさか。

アリスのお茶会で出される、「とびきりのお菓子」っていうのは…。

「…俺達のこと、か?」

そう気がついて、頭から血の気が引いた。

…そんなカニバリズムアリス、ちびっ子が泣くどころの騒ぎじゃないぞ。

しかし、アリスの行動は…最早疑いようもなかった。

「お前…!シルナは不味いぞ!腐った味がするぞ!シルナを食うのはやめとけ!」

「羽久が私に失礼なことを言ってる…!」

うるせぇ。

無駄だと思いつつも、俺はアリスに向かって叫んだ。

当然、聞く耳を持たないアリス。

あろうことか、更に指を伸ばして…俺達を掴もうとしてきた。

「っ、お前ら、逃げろ!」

そう叫ぶなり、俺はアリスの指から逃れた。