俺達は、それぞれお茶会の席について、主賓アリスの到着を待った。

ゲストが先に来てるのに、ホストが遅れるってどうなんだよ。

早く来い、早く。

「まだかなー、その、ありすって人」

すぐりは、だらしなくぐでーん、と机に突っ伏していた。

「ゲストを待たせるなど、マナー違反です」

イライラした様子のイレース。

「ナジュ君…。帽子の世界は大丈夫だった?」

「それは勿論。むしろ、好みの美女をぷにぷにしてきたので、元気いっぱいですよ」

「…??」

二人で会話をする、天音とナジュ。

…ナジュ、お前何してきたんだ?

聞いてみたいが、何だかゲスい匂いがするので、聞かないでおこう。

「凄く大きいお皿だね。この上にお菓子を置くの?」

令月は、テーブルの上の皿が気になる様子。

俺も思ったよ。見たことないくらい大きいよな。

多分あれだろう。高級な料理とか洒落たカフェにありがちな。

ちっちゃい料理を、無駄に大きな皿に乗せるのが、お洒落なんだよ。

「きっと、とびきりのお菓子だからだよ。楽しみだな〜」

「…」

シルナはとびきりのお菓子に期待して、わくわくと胸を高鳴らせていた。

…お前だけだよ。この状況で、ウキウキしていられるのは。

とびきりのお菓子とやらが、余程気になるらしい。

アリスのお菓子って、何だろうな…?クッキーとか?

「そのお菓子は、ちゃんとそのお菓子の味がするのかな」

令月がポツリと呟いた。

「…は?」

どういう意味だ。そのお菓子の味、って…。

「あー、そう。俺達さぁ、さっき『白ウサギの世界』で、本物のお菓子の家に入ったんだよ」

すぐりが、そう教えてくれた。

お菓子の家…?

それはまた…いかにもメルヘンで…。

「お、お菓子の家…!?」

…そして、シルナが好きそうだ。

「そ、そんなドリームハウスに…!?行ったの、二人共。本当にあったの!?」

案の定シルナは、疲れているはずなのに、その疲れさえ忘れて食いついている。

ドリームハウスって…。

つーか、お菓子の家って…。それは『不思議の国のアリス』じゃなくて、ヘンゼルとグレーテルでは?

解釈違いだろ。

「うん。扉はチョコで出来てて、窓はスティックチョコで…」

「壁は生クリームで塗られてて、ラングドシャのクローゼットとかもあったよねー。それから、お土産にドーナツをもらって」

「その後、いちごミルフィーユ村に行ったんだよ」

…すげー。そんな世界あったのか…。

「…〜っ!!」

シルナは、耐えきれないといった風に、ぶんぶんと頭を振り回していた。

落ち着け。荒ぶるな。

「ズルい…ズルいよ。私達は、ネズミに追いかけられたり、冷蔵庫に閉じ込められただけなのに…!」

「…」

「私もお菓子の家に行きたかった…!いちごミルフィーユ村に住みたかった…!!」

「…住む必要はないだろ」

「あぁぁ行きたかった〜っ!!」

落ち着けって。

元の世界に帰ったら、菓子くらいいくらでも食べられるよ。