…が、掃除用具の補充の前に、まずは全ての掃除用具入れを確認するのが先。

まだ、稽古場の掃除用具入れを確認してないからね。

今日中に、点検作業だけは終わらせておかないと。

今日点検を終えて、明日補充すれば、多分明日の下校時刻までには終わるだろう。

計画的だね〜。

と、思いながら、三人で稽古場に向かおう…としていると。

「…」

稽古場が近づくにつれ、段々とツキナの足取りが重くなっていった。

…??

どーしたんだろ、ツキナ。疲れた?

「どしたの?ツキナ。急がないと、下校時刻になっちゃうよ」

「う、うん…。…そうなんだけど…」

もごもごと口ごもり、腰が引けているツキナ。

…本当にどーしたんだろ?

「ツキナ?」

「…」

ツキナは、きょろきょろと周囲を見渡した。

そして。

「…ね、ねぇすぐり君…」

「何?」

「お化け…いないよね?」

と、尋ねるツキナの顔には、焦燥が浮かんでいた。

え、大丈夫?

「お化け…?」

「だ、だって…この稽古場、お化けが出るって噂が…」

…あー。

そーいえば、そーだっけ。

稽古場にお化けが出るって、一時期噂になってたよねー。

ツキナ、あれを本気にしてたんだ。

「だいじょーぶだよ。あのお化けは俺が退治したからさ」

生徒が噂してたお化けっていうのは、あれでしょ?

毎晩俺達がパトロールしてるときに見つけた、あの黒い影のことでしょ?

結局あの黒い影は、俺達のドッペルゲンガーだった。

ドッペルゲンガーの出処である、魔法道具…『オオカミと七匹の子ヤギ』だっけ?

あれはもう退治したから、二度とお化け…あの黒い影が現れることはない。

…はずなのに、なんか、未だに噂が消えてないよね。

噂が噂を呼んで、未だに生徒の間で語り継がれてる、ってことなのかなぁ。

皆物好きだよねー。

お化けの噂、案外皆気に入ってるのかもしれない。

ま、気持ちが分からなくもないけどさー。

「本当?大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。万が一何か出てきたら、そのときは俺が撃退するよ」

お化けだろうが、ドッペルゲンガーだろうが、得体の知れない魔法道具だろうが。

俺に言わせれば、人間以上に恐ろしいものなんてないね。