…すると、案の定。

「ホウキはある…バケツと…モップ」

「うん」

「すぐり君、雑巾は5枚ある?」

「あるよ。でも…一枚はボロボロだね」

「じゃ、これも後で補充しよっか」

一時間足らずで、ツキナは素に戻った。

疲れたか?疲れたのか?

まー、仕方ない。

校内全ての掃除用具入れの点検。これは思った以上の重労働だ。

美化委員一人では、とてもじゃないが荷が余る。

俺と『八千代』が手伝ってるから、まだマシだけど。

これ、手伝ってくれる人がいなかったら、途中で投げ出したくなるだろーね。

絶対一日仕事じゃ済まないし。

でも、さすが三人がかりでやると、効率が良い。

点検は順調に進み、この日のうちに現在六年生の教室を点検し終わった。

もしかして、これで終わりなんじゃない?

いやー、長かった。

良かった。下校時刻までは、まだ少し時間が…。

…と、思ったのも束の間だった。

「それじゃ、次は…稽古場に行こう」

ツキナはそう言った。

何?稽古場だって?

「まだあるの?掃除用具入れ…」

「うん。この後稽古場を見て、玄関と、職員室と、あと実習室と…」

わー。まだまだあるー。

気が遠くなる作業だよ。

「それに点検が終わったら、不足してる掃除用具を補充しないといけないし…」

わー。そうだったー。

目眩がする作業だよ。

「それ…もう、今日中には終わらないね」

「うーん。明日も手伝ってくれる?すぐり君」

「俺は勿論付き合うよ。ツキナの為だからね」

「やったぁ。すぐり君ありがとう!」

素敵な笑顔、頂きました。

何度も言うけど、ツキナの為だからね。

俺の労力くらい、喜んで貸すよ。

…しかし。

「令月君も、明日手伝ってくれる?」

「僕?僕はどうしよう。明日の気分で決め、いたたたたた」

ぐりぐりぐり、と『八千代』の足を踏みつけた。

ちょっと君、ツキナに何言おうとしてんのかな?

今のは聞かなかったことにするよ。

「『八千代』も手伝ってくれるって、ツキナ」

ツキナの申し出だもんね。喜んで受けるに決まってるよね〜。

「ほんと?良かった〜!二人が手伝ってくれたら、百人力どころか、二百人力だよ!」

それは良かった。

俺はツキナの笑顔を守り通したよ。さすが。

そんな訳で、明日も補充作業の為に駆り出されることが決定した。