何を言い出すのか、と思われるかもしれないが。

だって、そう考えるのが自然じゃないか?

これほど立て続けに、魔法道具に襲われたら。

魔法道具とは、あくまで道具。それ自体は、何の脅威にもならない。

使い方の問題だ。

包丁と同じ。使い方次第で、美味しい料理を作る為にも使えるし、人殺しにも使える。

ようは、それを扱う何者かの意思で、有害なものでも無害になり、無害なものでも有害になるのだ。

そして、俺が思うに…この度重なる魔法道具の襲来は、誰かの悪意によって意図されているものではないかと…。

「成程、それが名探偵羽久さんの推理ですか」

と、ナジュが言った。

…名探偵じゃなくても、誰でも思いつくだろ。このくらい。

「でも…あの魔法道具は、賢者の石の封印が解かれた影響で出てきたものだって…」

天音が言った。

そう、その通り。

最初は、そうだと思っていたが…。

「それにしちゃ、いくらなんでも多過ぎないか?しかも、狙い澄ましたかのように俺達にだけ…」

他の誰かじゃなくて、わざわざ俺達を狙ってくるというのが陰湿だ。

いくら、ここイーニシュフェルト魔導学院が、元々魔法道具の封印場所であったとはいえ。

こうも立て続けに襲われたんじゃ、何か裏があるのではないかと疑うのも当然と言うものだ。

「もし、何者かの悪意によって、あの魔法道具の封印が解かれているなら…そいつをどうにかしないことには、延々と同じことの繰り返しだぞ」

一つ倒しても、また別の魔法道具が現れる…の無限ループだ。

魔法道具全制覇するまで、俺達に平穏はない。

あの童話シリーズ、全部でいくつあるのか知らないが。

全部制覇しようと思ったら、その前にいつか死ぬな。

「何処かで、このループを断ち切らないと…」

「…そうだね…。…でも、残念ながら心当たりが…」

…ないんだよな、シルナの言う通り。

強いて言うなら…シルナがイーニシュフェルトの里出身である、ということくらいか?

あとは、俺達と敵対関係にある『アメノミコト』…。

でも、『アメノミコト』が、里の魔法道具の情報を知っているとは思えないし…。

あるいは…ヴァルシーナか?

あいつは、シルナや俺達に対する悪意もあるし、イーニシュフェルトの里の魔法道具について知識もある。

しかし…何より里の誇りを重んじるヴァルシーナが、封印された里の遺産を、みだりに使用するとは思えない。

…誰かの悪意によるものだとしても、結局、誰に悪意を向けられているのかは分からないままである。

…こうなったら。

「…聞いてみるか。あいつに…」

少しでも情報を持っていそうな人物に、意見を仰ぐのはどうだろう。

「あいつ?」

「…決まってるだろ?」

恐らく、俺より…もしかしたらシルナより、イーニシュフェルトの里の封印に詳しい人物がいる。

彼に、連絡を取ってみることにしよう。