「え、おかしいって…?」

と、天音は首を傾げた。

だって、そうだろう?

「ここ最近、童話シリーズの魔法道具の封印が、立て続けに解かれてるだろ?」

「それは…そうだけど」

「いくらなんでもおかしいだろ。一体いつまで出てくるんだよ」

一つ倒したと思ったら、また次が出てくる…の繰り返しじゃないか。ここ最近。

いい加減、うんざりしてきたぞ。

いや、もう『人魚姫』の辺りで、充分うんざりしてたけどさ。

今回は、未だかつてないほどの命の危機を感じたものだから。

今後、またあんな魔法道具が出てきたら、今度こそ命を失ってもおかしくない。

倒しても倒しても、手を変え品を変え、新しい魔法道具が俺達の前に出てくる。

『シンデレラ』を倒したばかりなのに、ちっとも安心出来ない。

次はどんな童話シリーズが、俺達の前に現れるのかと思うと…。

しかも、やけに武闘派が多いんだよな。

人魚姫なんか、ポセイドンの槍持ってたし。

今度は何だろうな。

髪の毛で首絞めてくるラプンツェルとか?

有り得る。もう今までの流れからして、充分有り得る。

こえーよ。

「全くですね。面倒臭いことこの上ない。私の完璧な授業計画の妨げです」

眉をひそめたイレースが言った。

授業計画の妨げって言うか、それ以前に命の危機を心配すべきなのでは?

「そうですねぇ。結局あの魔法道具って、あといくつあるんですか?」

ナジュがシルナに尋ねた。

それ、俺も知りたい。

あと何回、俺は命の危機を感じれば良いんだ?

「あといくつ…か…。答えてあげられたら良いんだけど、私にも正確な数は分からなくて…」

…とのこと。

…まぁ、あの魔法道具…シルナが関わった訳じゃないんだったよな。

あといくつ出てくるのか…そもそも出てくるのかどうかも、シルナには分からない。

シルナのみならず、誰にも分からないことだ。

…もしも、あの魔法道具が…意図的に、誰かの手によって目覚めさせられたものではないとしたら、だがな。

いよいよもって俺は…この状況が、誰かの悪意によるものなのではないかと危惧している。