「倒しても倒しても、次々に現れる…。このままじゃ、いつか大惨事になりそうで怖いね」

全くだな。

しかし、俺が頭を悩ませているのは、童話シリーズの件だけではない。

「…他にも、心配事はある」

「何?私のこと?」

「…よく分かってるじゃないか」

「だって、敵意丸出しなんだもん、ジュリス」

仕方ないだろ。

俺はまだ、お前のことを100%信用してる訳じゃないからな。

いくら、親であるベリクリーデに逆らうことはないと言っても。

親と子は、それぞれ別人格なのだ。

人格が変われば、考えも変わる。

親に隠れて、子が勝手に良からぬことを企まないと、何故安心出来る?

目を光らせておかないと、何をするか分かったものじゃない。

ある意味、ベリクリーデ以上に保護者が必要なんだよ。お前は。

「心配しなくても、私はベリクリーデとジュリスの味方だよ」

「あっそ。口では好きなこと言えるからな」

今のところ、お前の存在は他の奴らには黙ってるが。

お前が変な気を起こしたら、そのときは容赦しないからな。

「心配性だね、ジュリスは」

「言ってろ。…そもそもお前、魔法は使えるのか?」

そこを確かめていなかった。

確か羽久の他人格は…人格によって様々だったよな。

羽久は二十音と同じく、時魔法のエキスパートだが。

羽久の中にある他の人格は、魔法が使えない奴や、使えたとしても回復魔法に限られていた。

ベリーシュは、魔法を使うことが出来るのだろうか。

使えるのだとしたら、何の魔法を?

「使えるよ」

と、ベリーシュは答えた。

使えるのか。

意外と、あっさり認めやがったな。

使える癖に「使えない」と嘘を付く訳じゃないのだから、その点は信用して良いかもしれない。

それだけで心を許す俺じゃないがな。

「何の魔法を使うんだ?お前は」

「星魔法だよ。知ってる?」

ベリーシュは、これまた素直に答えた。

「…知ってるが…なかなか珍しいな」

星魔法とは、その名の通り、星の力…天体の力を借りて、魔力に変える魔法のことだ。

時魔法に負けず劣らず、非常に珍しい魔法だ。

練習して使える魔法ではない。天賦の才が必要だ。

従って、使える者はそう多くない。希少な魔導師と言えるだろう。

…そして、星魔導師は…かなり強力な魔導師でもある。

ベリクリーデほど、潜在能力に恵まれている訳じゃないだろうが…。

しかしベリーシュは、ベリクリーデと同じ身体を共有している人格だ。

その「お得意」の星魔法で、良からぬことを企まない保証はない。

俺は、ますます警戒を強めた。

「…そんなに睨まなくても大丈夫だよ」

ベリーシュは、苦笑いしながら言った。

へぇ、そうかい。

「悪いが、俺はお前に100%気を許すつもりはない」

「全く、過保護だな…。ベリクリーデのこと、そんなに大事?」

「あんな奴だが、あれでもベリクリーデは俺の相棒だからな」

相棒として、目を光らせるのは当然のことだろう。