「大体、お前…」

「?何?」

「いや…魚釣りは別に良いんだけど…」

定番の趣味だもんな。

男の趣味と思われがちだが、女性でも全然アリだろう。

それは良いんだよ。健全な趣味で、悪くないと思う。

ベリクリーデが魚釣りに挑戦したいなら、そうすれば良いさ。

さすがにマグロは無理だと思うけどな。

まぁ、ブラックバスくらいなら釣れるんじゃないか?

…しかし、魚釣りに必要なものはエサだけではないということを、ベリクリーデは分かっているのだろうか。

「…お前、釣り竿はどうするんだ?」

「え?」

「魚釣りには、釣り竿が必要だろ?」

エサがあっても、魚を釣り上げる竿がないことには、魚釣りは出来ないぞ。

すると、ベリクリーデはこくんと頷いた。

どうやら、分かってはいるようだな。

「うん。だから、これから作るんだよ」

お前のそういう、チャレンジ精神精神旺盛なところは、本当長所だと思う。

しかし、ベリクリーデの場合…もう少し、現実を見るということをして欲しい。

何でもかんでも、挑戦すれば良いってもんじゃないんだぞ?

「…手作りするのか?釣り竿…」

「うん」

「作り方は分かってるのか?」

「?細長い棒に、糸をつけたら良いんでしょ?」

物凄く簡単に言うが、絶対そんなに簡単じゃないぞ。

少なくとも、そんな貧弱な釣り竿ではマグロなんて絶対釣れない。

「もう目星はつけてるんだよ。隊舎裏の、おっきな桜の木を切り倒して釣り竿の材料に…」

「あーはいはいはい、逮捕だ逮捕。そんなことはさせないからな」

「え、何で?」

「何でじゃねぇんだよ」 

魚釣りの為に、桜の木を犠牲にしようとするな。この馬鹿者め。

…と、こういう訳で、結局。

ベリクリーデの知的好奇心を満足させる為に。

今日も今日とて俺は、ベリクリーデの奇行に付き合う羽目になったのだった。

全く、これで何回目だよ。