…と、強がってみたものの。

「ぐっ…。うぅ…」

…辛い。これは辛いぞ。

急速に、大量の魔力を吸われている。

手首からの出血も相まって、頭がフラフラしてきた。

…不味い。

ここで俺が倒れれば、それでゲームオーバーだ。

だって、もう制限時間は過ぎてる。

俺の時魔法が解ければ、もうその瞬間に、俺達の負けだ。

…そんなことはさせない。絶対に。

しかし、気力だけでどうにかなる問題ではなかった。

10分って言ったけど、無理かもしれない。

時魔法を発動させ、制限時間を延長してから、既に5分が経過していた。

あと半分。

でも、正直、あと1分持たせるのも、自信がなかった。

…考えるな。そんなことは考えなくて良い。

目の前の1秒のことを考えろ。あと1秒持てば良い。今、この1秒。

1秒を積み重ねていけば、1分にも5分にもなる。

お前の両肩に、仲間の命が懸かっているんだ。

ここでやらなきゃ、いつやるんだ。

俺はこんなところで…忌々しい魔法道具に殺されて、人生を終わるつもりはない。

ここにいる仲間達と、一緒に帰るのだ。

死ぬのは、まだ早い…。

…けど。

「うっ…ぐ…」

視界がふらつき、目の前が暗くなってきた。

頭を振って気力を取り戻し、かろうじて魔法を継続させる。

…『シンデレラ』に殺される前に、自分で死にそう。

冗談じゃない。死ぬのは御免だが、一人で死ぬのはもっと御免だ…。

…すると、そのときだった。

「…?」

視界の隅に、ちらりと、妙なものが見えた気がした。

黄色…と言うか、オレンジ色の何かが見えたような…。

玄関に、何でそんなものが…?

頭がふらついて、幻覚でも見えたか?

何かが見えた方向に、目を凝らすと。

…オレンジ色の、丸っこいボールのようなものがあった。

…何だ、あれ?

しかも、あの場所。

ショーケースのような、ガラスの台座が置いてある。

あれは確か…学院のエンブレムでもある、青い薔薇のブローチを置いている場所だ。

普段はあのショーケースの中に、ブローチを飾ってある。

…はず、なのに。

今、ショーケースの中に入っているのは…青い薔薇のブローチ、ではなく。

…オレンジ色の、かぼちゃだった。

か…。

…。

…かぼちゃ?