…しかし。

現実は、俺達の努力を嘲笑うように。

…日付が変わる午前0時まで、残り10分。

冷静になろうとしたって、正直、そろそろ無理だった。

だって、考えてみろ。

死刑執行まで、あと10分なんだぞ。誰だって焦る。

焦りながら、俺は必死で木箱を探し続けた。

冗談抜きで、これはマジでヤバいぞ。

かつて、これほど命の危機を感じたことがあっただろうか。

『アメノミコト』に襲撃されたときだって、これほど焦りはしなかったぞ。

七人がかりで、イーニシュフェルト魔導学院を探し回り。

残すところは、一階の学院玄関付近のみ。

ここになかったら、もうおしまいだ。

片っ端から靴箱を開けては、中を確認する。

いつの間にか、他の六人も玄関に集まってきた。

誰も何も言わず、黙々と靴箱を確認するだけだった。

シルナと天音は、焦った顔をしていたが。

イレースと令月とすぐりは、至って冷静な表情を崩さず。

ナジュもナジュで、「これから死ぬ?それがどうした」と言わんばかりの、余裕の表情。

あいつ、幽霊になっても、死ねるなら別にいっかくらいに思ってるんじゃないだろうな。

冗談じゃないぞ。

素早く手を動かして、靴箱を開けていると。

「…!」

例の木箱が入っていた。

これか?探しものは。

俺は、ちらりと時計を見た。残り時間はもう5分を切っている。

時間的に、もうこの木箱で最後だろう。

つまり、これじゃなかったら、俺達の運命はここでおしまいだ。

あとは野となれ山となれ。運命を天に委ねるしかない。

…頼むぞ…!

俺は祈るような思いで、木箱の蓋を開けた。

すると、その木箱の中に入っていたのは…キラキラと輝く靴だった。

…銀色の折り紙で折られた、紙の靴。

…まぁ、そんな気はしてたよ。

なんか、やけに木箱が軽かったからさ。違うんだろうなーとは思ってた。

最後の最後で、これかよ。

気力が抜けて、気絶してしまいそうになった。

が、俺は木箱を放り投げて、正気を取り戻した。

馬鹿やってる場合じゃねぇ。

残り時間は、あと3分を切った。最後の一秒まで、決して諦めるな…!



…しかし。


「…これは、もう無理ですね」

ずっと黙っていたナジュが、不意に口を開いた。