「…見つからないな…」

「うん…」

食堂を隈無く探しても、お宝は見つからなかった。

偽物なら見つけたけどな。

冷蔵庫の中に一つ。

それともう一つ、皿を入れてある食器棚の奥から、木彫りの靴を見付けたよ。

違うっつーの。

無駄にうんざりさせられただけで、結局食堂でも、本物のガラスの靴は見つけられなかった。

「…」

落胆している暇はない、ということは分かっていた。

それでも俺は、食堂の壁に掛けてある時計に、ちらりと目をやった。

そうせざるを得なかった。

食堂の捜索に、思ったより時間がかかってしまったようだ。

時刻は既に、就寝時間を過ぎている。

…残り時間は、あと僅かだ。

…これは不味いな。本格的に不味い。

気力だけでどうにかなる問題じゃない。

「…あと残ってるのは…一階の教室と、それから玄関…」

そこを探して、見つかれば良いが。

俺が今、一番恐れているのは。

「もし、一度見た場所に見落としがあったらおしまいだぞ」

「…そうだね」

これまで、校舎内を隈無く探した…つもりではいるが。

もし、見落しがあったら。気づいてない場所があったら。

そのときは、もうお手上げだ。

充分可能性はある。

口に出さないだけで、全員同じ焦りを抱えているのだ。

しかも、この広い校舎を、たった七人で探さなくてはならない。

焦るあまり、見落としてしまうことはあるだろう。

もし、その見落とした箇所に、本物のガラスの靴が隠されていたら。

日没までにガラスの靴を見つけるのは、ほぼ不可能と言って良い。

俺だって、正直、全く見落としていない自信はない。

他のメンバーもそうだろう。

…だが。

「…泣き言、言ってる暇はないよな」

「…うん」

見落としを恐れている場合じゃない。

そんな暇があったら、少しでも動け。動いてさがせ。

そうするしかない。

俺達に残された時間は、もう長くない。

だったら、余計なことは考えず…少しでも手と足を動かすべきだ。