「外、どうでした?」

制限時間が迫っているからか、ナジュは珍しく真面目だった。

お前、真面目になろうと思えばなれたんだな。

「僕はいつだって真面目に生きてますよ」

「そうだったのか?」

「それより、外は…。…どうやら芳しくなかったようですね」

俺の心を読んで、察したらしい。

「あぁ。おちょくられただけだ」

「それは残念」

「あとは、令月とすぐりに任せてきた。あの二人なら…」

「暗がりの中でも、問題なく探してくれるでしょうね」

そうだな。

「だから、俺は学生寮を探そうかと…」

思って、ここに来たんだが。

すると。

「学生寮の中なら、さっき僕とナジュ君で探したよ」

と、天音が言った。

本当か。

あ、それでここにいたんだな。

しかし同時に、俺は落胆を隠せなかった。

学生寮を探してきた二人が、まだ浮かない顔をしてるってことは…。

「…駄目だったか」

「えぇ。折角空き巣したのに、手ぶらです。空き巣損ですよ」

空き巣損って何だよ。

「偽物なら、いくつか見つけたけどね…」

俺と同じく、シンデレラにおちょくられたらしい天音が、落胆したように言った。

そうか、お前達もか。

シンデレラ被害者の会が、本格的に発足しそうだな。

なんて、冗談を言ってる場合じゃないが。

「でも、まだ女子寮が残ってる。諦めるのは速いよ」

何?

「女子寮はまだ探してないのか」

「僕は喜んで入ろうとしたんですが、さすがに無人と言えども、女子寮に男教師が入るのは駄目だろうって、天音さんが」

喜んで入ろうとするなよ、この色ボケ教師。

説教したいところだが、しかしそんなことをしている暇もなく。

「じゃあ、女子寮の捜索は…」

「イレースさんがやってくれてるよ」

あぁ、そうか。それなら安心だな。

…すると。

「何をしてるんです」

「あ、イレース…」

噂をすれば何とやら、女子寮の捜索を終えたイレースが、学生寮の外に出てきた。

もう探し終わったのか。早いな。

で、結果は…。

「イレース、ガラスの靴は…」

「残念ですね、ありません。…偽物以外は」

イレースは偽物の入っていた木箱を、地面に叩きつけた。

中に入っていたガラスが、粉々に砕け散った。

お、おいおい。偽物とはいえ。

「何が入ってたんだ?」

「ガラスの靴ならぬ、ガラスのバナナでした」

そりゃ投げ捨てるわ。

俺でもそうする。

人をおちょくるにも程があるぞ、シンデレラの奴。