「…見つかったか?」

結果は芳しくないと分かっていながら、俺はそう聞いてみた。

しかし、案の定。

「いや…まだ見つけられない」

シルナは、表情を固くして答えた。

…だよな。

もし見つけてたら、そんな顔はしてないだろう。

…本当に不味いな。

いよいよもって、焦らなければ。

「日が落ちる前に、手分けして外を探してしまおう」

「あぁ…。そうするしかないな」

日没まで、あと何分だ?30分もあるか?

この僅かな時間で、中庭やグラウンドを探せるだろうか?

…すると。

「最悪日没が来ても、僕と『八千歳』は外を探すよ」

と、令月が言った。

「僕達なら夜目が利くから、学院長達よりは探しやすいよ」

…成程、そうだったな。

すぐりも、同意するように頷いた。

…そりゃ助かるな。

「分かった。じゃあ日没が来たら、外の捜索はお前達に任せる」

「うん、任せて」

この上なく頼もしくて、感激の涙が出そうだな。

が、そんなことに感激している暇があったら、さっさと探せってな。

すると、中庭のベンチの下を覗いていたナジュが。

「木箱、見つけました」

何個目になるか分からない、木箱を発見した。

また見つけたか。

それが本物であってくれたら、俺達の不安も焦りも、ここで終了するんだがな。

さて、世の中はそんなに楽に出来ているだろうか?

「ナジュ君、中は…?」

「今、開けます…。…この通りですね」

天音に促され、ナジュは木箱を開いた。

木箱に入っていたのは、透明なガラスの靴…ではなく。

透明な、プラスチックの靴だった。

…。

…やっぱり馬鹿にしてんな。

またしても、ぬか喜び。

「くそっ…。地味に本物に似てるのが、余計ムカつく…」

「全くですね」

一瞬、期待してしまったじゃないか。

偽物なら、もっと分かりやすい偽物を入れておいてくれ。

期待と落胆の差が激しくて、探す気力がどんどん失せていく。

もう無理なんじゃないか、という気になってしまう。

…でも。

「…」

イレースは、シンデレラの用意した偽物トラップに落ち込むこともなく。

ただひたすら黙々と、植木の隙間を覗いては、木箱を探していた。

…イレースは偉いな。

まだ諦めていない。

そう、諦めてたまるものか。こんなところで、こんなことで。

全てを諦めて投げ出すのは、制限時間の最後の一秒になってからで良い。

「…よし、また手分けして探そう」

「そうですね」

何としても、本物を見つけるのだ。

幽霊になんぞ、なってたまるか。