それから俺達は、再びバラバラに分かれて、手分けしてガラスの靴を探した。

イーニシュフェルト魔導学院の校舎を、徹底的に洗った。

その間俺は、木箱を五つほど見つけた。

木箱を見つける度、俺は飛びつくように蓋を開けてみたものだが。

全部、ぬか喜びだった。

赤いハイヒールだったり、スニーカーだったり、ガラスのサンダルが入ってたり。

ガラスの靴べらが入っていたときには、思わず木箱を投げ捨てそうになった。

靴ですらねーじゃん。ふざけんな。

完全に、シンデレラに馬鹿にされている。

こんな、人をおちょくるシンデレラは嫌だ。

一連の童話シリーズのせいで、俺の中でお伽噺のお姫様に対する評価が爆下がりだ。

他のメンバーが、何とか見つけてくれないかと思ったが。

今のところ、ガラスの靴を見つけたという報告はない。

多分皆、俺と同じように、シンデレラにおちょくられているのだろう。

これじゃあ、シンデレラの思う壺だ。

偽物ならちょくちょく見つかるが、偽物をいくら見つけても、意味がない。

俺達が探しているのは、本物のガラスの靴だ。

なんて難易度の高い宝探しゲームだよ。

本物を見つけられないままに、時間だけがどんどんと過ぎていった。

次第に焦りばかりが募っていく。

迫る制限時間が、頭の中をもたげる。

俺は屋上に上り、隅々まで見渡した。

すると。

校舎内と屋上を繋ぐ扉の影に、隠すように木箱が置かれていた。

また見つけた。

開けてみて、本物であることを確認しなければ安心出来ない、と分かっていても。

それでも、木箱を見つける度に期待してしまう。

これが本物であれば、俺達の命懸けの宝探しはおしまいだ。

俺は木箱を手に取り、祈るような思いで蓋を開けた。

すると、中に入っていたのは。

黄ばんでいない、ちゃと透明なガラスの靴だった。

ヒールが高過ぎることも、低過ぎることもなかった。

右足用じゃなくて、左足用の靴だった。

まるで、本物のガラスの靴だ。

しかし、これが偽物であることは一目瞭然だった。

俺の中に、もう何度目になるか分からない、深い落胆が広がった。

何が問題なのか、って?

サイズだよ。靴のサイズ。

明らかに子供サイズで、こんなのシンデレラの足に入るはずがない。

またおちょくられただけだ。

俺は木箱を放り投げて、一つ溜め息をついた。

…そして。

屋上から、周囲を見渡した。

ずっと、目を背けていたが…。

そろそろ、現実と向き合わない訳にはいかない。