俺の見つけた木箱に入っていたのは、シンデレラお望みの、ガラスの靴。

…しかし、先程も言ったように。

「…なんかこれ、黄ばんでません?」

木箱の中のガラスの靴を見て、ナジュがポツリと言った。

だよな。お前もそう思うか。

俺もそう思ってんだよ。

更に。

「…令月、何だそれ?」

「わら草履だね」

令月の発見した木箱に入っていた靴は、ガラスでさえなかった。

新品のわら草履が、片方だけ。

…何でわら草履?

「すぐり、お前のは…」

「これ、ゲタだねー」

すぐりの発見した木箱に入っていた靴も、ガラスではなく。

これまた新品のゲタが、片方だけ。

…何でゲタ?

「惜しかったな…。両足揃ってたら履いたのに…」

「だよねー。片方だけなんて、不親切だなー」

揃ってたら履くのかよ。お前達は。

こんな怪しい靴を履くんじゃない。

いや、そんなことより。

「天音、お前は?」

「僕のは…ちゃんと、ガラスの靴だよ」

天音の発見した木箱に入っていた靴は、ちゃんとガラスの靴だった。

しかも、俺のように黄ばんでいるようなこともない。

ちゃんと透明な、美しいガラスの靴。

…あれ?これが当たりなのでは?

「これじゃねぇの?正解は…」

黄ばんでもないし、わら草履でもゲタでもないぞ。

ってことは、これが『シンデレラ』の探していた、本物のガラスの靴…。

…と、思ったが。

「左右、反対なのでは?」

イレースがそう言った。

「え?」

「我々が最初に見つけたのは、左足の靴だったでしょう。これは右足用です」

…。

…マジで?

そんな面倒臭い注文つけてくんの?シンデレラって。

少々左右が間違ってようと、我慢して履けよ。

「ってことは…俺達が見つけたのは、偽物…?」

「…どうやら、そのようだね」

と、シルナは落胆したように言った。

偽物なんかあるのかよ。紛らわしっ…!

「実は、僕もさっき木箱見つけたんですよ」

ナジュが言った。

「え、そうなのか?」

「はい。開けてみたら、ガラスの靴が入ってたんですけど…。…ヒールが物凄く高かったので、多分これは偽物なんだろうと思って」

ナジュも、偽物を見つけてたのか。

超ハイヒールのガラスの靴を。

そして、イレースも。

「私も先程見つけましたよ」

「どんな靴だった?」

「ガラスの靴でしたが、踵が全く無く、平べったいノーヒールの靴だったので、あれも偽物なのでしょうね」

今度は逆に、全くヒールのない靴か。

くっそ…。シンデレラの奴、偽物をばら撒いて遊んでやがる。

木箱を見つけて一喜一憂する俺達を、高みの見物して楽しんでるな?