ナジュの読心魔法は使える。イレースの雷魔法も。

それなのに、シルナの分身魔法は使えないって…。

…更に。

「捜し物なら、『八千歳』は得意だよね」

「うん。糸魔法を張り巡らせれば、俺に見つけられないものはないね」

令月とすぐりが言った。

あ、そうか…。

『サンクチュアリ』によって、学院に爆弾が仕掛けられたとき。

あのとき、すぐりが糸魔法で、学院の敷地内を総ざらいしてくれたんだったよな。

あのときと同じ手段を使えば、ガラスの靴なんて簡単に見つけられそうなものだが…。

「…ん…?」

糸を張り巡らせようとしたすぐりは、途中で手を止めた。

「『八千歳』、どうしたの?」

「…駄目だ。糸魔法が使えない」

何だと?

「使えない?」

「うん。糸自体は出せるんだけど…これをいつも通り張り巡らせようとすると、出来ないね。…何て言うか、世界に拒まれてるって感じ?」

世界に拒まれる…。

「『八千代』は?君の力魔法は使えるの?」

「僕の力魔法は…。…うん、使えるみたい」

「ふーん。『八千代』が使えて僕が使えないって、なんかいつもとは逆だねー」

…全くだな。

今ばかりは、笑えない冗談だ。

一体どうなってる?

賢者の石の異次元世界では、どんな魔法も一切使えなかった。

でもこの世界は…使える魔法と、使えない魔法があるようだ。

「僕の回復魔法は…。…使えるみたいだ。羽久さん、君の時魔法はどう?」

天音は杖を握って、自分の回復魔法が使えることを確認し。

俺にも、自分の魔法を確認するよう促した。

あ、そうか…俺も。

「羽久の時魔法が使えたら、凄く便利だね」

「ほんとだ。世界の時間を遅らせて、制限時間を無限に稼げば良いじゃん」

と、令月とすぐりが言った。

お前らな。

確かにその通りだけど、異次元空間の時間を遅らせるなんて、そんなに簡単じゃないんだぞ。

まぁ、いざとなったら、それも手だが…。

俺は杖を取り出して、得意の時魔法を発動させた。



…しかし。