「何だよ?厄介な条件ってのは」

「ゆっくり說明してあげたいんだけど…残念ながら、そんな時間はないんだ」

何?

「私達がここに送られた時点で、『制限時間』はもう始まってる。深夜12時までに、ガラスの靴を見つけなきゃならない」

…は?

何だか、本当に厄介なことを言い始めてるぞ。

何だよ。制限時間って…。

「『シンデレラ』は宝探し。すなわち…この世界の何処かに隠されたガラスの靴を探し出し…『シンデレラ』を見つけなきゃならないんだ。深夜の12時までに」

シルナはそう説明した。

…えぇと、よく分からないが。

つまり…。

「日付が変わるまでに、この世界の何処かに隠されたガラスの靴を、手分けして探さないといけないってことですよね?」

シルナの心を読んで、いち早く事情を理解したナジュが、分かりやすくそう説明した。

「そう。今すぐ動かなきゃならない。ガラスの靴を探しに…」

…宝探しって、そういうことかよ。

ガラスの靴ってのは、ここに来る前に俺達が見た、あの木箱に入ってたガラスの靴のことだよな。

この世界に飛ばされたとき、何処かに消えたものと思っていたが…。

あの靴は、この世界の何処かに隠されていて。

それを、日付が変わるまでに見つけ出さなきゃならない、と…。

成程、それは宝探しだな。

ガラスの靴が宝だとは、俺には到底思えないが。

「この世界の何処かに…ガラスの靴が…」

「何処にあるんです、それは。ノーヒントですか?」

「うん、ノーヒント…。この異空間の中にあるのは確かだけど」

成程、学院の外の景色が空っぽなのは、それが理由か。

学院の外までもが捜索範囲に含まれたら、さすがにお手上げだもんな。

学院の敷地内だけなら、まだ何とか…。

…って、何とかなるのか?

俺達は七人揃っているとはいえ、イーニシュフェルト魔導学院の敷地は、決して狭くない。

たった七人で探し回るには、手数が足りないぞ。

…手数…。

「…シルナ、お前分身は?作れないのか?」

手っ取り早く「手数」を増やそうと思ったら、こんなときこそ、シルナの分身魔法が役に立つ。

虫でも人でも何でも良いから、シルナの分身を増やしまくって、捜索する「手数」を量産すれば…。

案外、ガラスの靴なんてすぐに見つかるのでは?

…しかし。

「…駄目だね。分身魔法が使えない。…杖に全く手応えがない」

杖を手にしたシルナは、落胆したように頭を振った。

使えない、だと?

「でも、ナジュの悪趣味な読心魔法は使えるんだよな?」

さっき読んでたもんな?

「悪趣味な、は余計ですけど…。僕の読心魔法は使えますね」

…だよ、な?

「イレース、お前いつもの雷魔法は使えるか?」

「…使えるようですね。誰かを丸焼きにしたいなら、いつでも」

イレースは杖を手に、バチバチと雷を迸らせていた。

自分で聞いておいてアレだが、イレースに確認しなきゃ良かった。