…しかし、出てきたのは良いけども。

アトラス、いるかな?

今任務で不在です、と言われたら拍子抜けだが…。

しかし。

アトラスは、聖魔騎士団隊舎の訓練場にいるとかで。

俺とシルナは、人魚姫を連れて、訓練場に行ってみた。

「あぁ、胸が高鳴りますわ。わたくしを待っているアトラス様は、一体どのような方なのかしら?」

「…」

…わくわくしてるところ、悪いけどさ。

アトラスは別に、お前を待ってはいないと思うぞ。

それに何より、アトラスは…。アトラスには…。

「よし、ここだな…」

俺達は、アトラスのいる訓練場にお邪魔した。

すると。

「ふぅ…。今日も良い汗をかいたな」

アトラスは、丁度訓練を中断し、一息ついているところだった。

そんなアトラスの周りには、真っ二つに砕けた魔導人形が散らばっていた。

…事故現場…?

アトラスの手には、例の、いつもの大剣が握られていた。

シルナだったら、あまりの重さにプチッと潰されかねないほどの、巨大な大剣である。

多分俺でも、両手で抱えて持ち上げられないと思う。

そんな物騒な大剣を、アトラスは片手で振り回しているからな。

全く、恐ろしい男だ。

「アトラス」

「ん?」

俺が声をかけると、アトラスがくるりと振り向いた。

人魚姫、アトラスと初対面。

目をキラッキラさせて、恍惚としてアトラスを見つめていた。

おめでとう。

今のうちに、良い夢見ておけよ。

「なんだ、羽久と学院長じゃないか。どうした?」

「…ちょっと、用があってな…」

まさか、ここにいる自称人魚姫が、お前に恋したらしくて…とも言えず。

何と説明したら良いものか。

「用?何だ?」

「いや、それは…その…」

「それに、そこの女性は誰だ?見慣れない顔だが…学院の関係者か?」

アトラスは、俺達が連れている人魚姫に気づいた。

自分に視線を向けられ、人魚姫はぽっと頬を赤く染めていた。

…乙女…。

「関係者って訳じゃないんだが…。それが…」

説明…しない訳にはいかないよな。

何て言ったら良いか分からないが、それでも…。

…と、思っていた、そのときだった。




「アトラスさん。戻りましたよ」

「…!シュニィ!」



人魚姫の恋が絶対に叶わない理由、その人がやって来た。