で、最後に残った男性と言えば。

「え、えーと…。あの、私はその、そういう色恋めいたことは…」

もぞもぞしながら、人魚姫の選定を逃れようとするシルナ。

しかし。

「え?いえ、あなたは花婿候補にしては、歳を取り過ぎですわ。わたくしに釣り合うのは、もっと若い男性ですから」

まさかの、人魚姫の方から願い下げ。

その場に崩れ落ちるシルナである。

うん。お前は泣いても良いと思うぞ。

つーか、さっき「年の差は関係ない」って言ってなかったか?

何だ、この特大ブーメランは。

自分が年上な分には気にしないが、相手が年上なのは嫌なのかよ。

自分勝手か。

すると、人魚姫は。

「…じーっ」

「…何です、気色悪い」

シルナの代わりと言わんばかりに、イレースを品定めしていた。

え?…同性だよな?

人魚姫って、そっち系アリなのか?

ジェンダーフリー人魚姫。

「いえ、そちらのおじ様の代わりに、あなたでも良いかと思ったのですけど…」

おじさんシルナの価値は、女性であるイレース以下らしい。

やっぱり泣いて良いぞ、シルナ。

どうやらお前は、人魚姫カーストの最下層にいるらしいな。

「随分と気が強そうですわね。わたくしは、もっと優しい方が好みですわ」

「ふん。私だって、あなたのような不審者は願い下げです。泡になって消えなさい」

酷い言い様である。

「なーんだ…。人魚姫とイレースさんの、異種族百合展開が見られるかとおも、もがもがもが」

「…何か言いましたか?」

アホなことを言うもんだから、ナジュは引き千切らんばかりに頬をつねられていた。

気色の悪いことを言うな。

「うーん…。なかなか、理想の殿方には巡り会えないものですわね」

この場にいる花婿候補は、結局、全員お眼鏡に適わなかったようだ。

そうか。

じゃ、そのまま海に帰ってもらって良いだろうか。

しかし、話はそう簡単には行かない。

「あなたが一番マシでしたから、やはりあなたにしましょうか」

妥協案で、人魚姫はナジュを選ぼうとしていた。

花婿候補って、そういう選び方をするもんじゃねぇだろ。

何だよ、一番マシだからって。

「は?絶対嫌なんですけど。好みじゃないです」

リリスに操を立てるナジュは、断固拒否。

…すると。

「他に、わたくしの花婿候補となる男性は…。…ん?」

ん?

学院長室の中をうろうろ歩いていた人魚姫が、ふと足を止めた。

そして、驚愕に目を見開いた。

「…こ…この方は…!」

え?