それはともかく、今はナジュの選定中である。

なかなか高評価なので、花婿候補はナジュに決まりか、と思われたが。

「花婿候補なら、好きに選べば良いですけど。僕には既にリリスという、永遠のプリンセスがいるので」

あっ。

「ついでに、第二妻を娶るつもりもないので、例えあなたが僕に恋をしても、それは永遠に叶いませんよ」

…そうだよな。

こればかりは、ナジュは絶対に譲るまい。

ナジュとリリスは、種族の壁を超えて相思相愛である。

それは疑うまでもない。

訳の分からん人魚姫ごときが、ナジュとリリスの間に割って入ることなど出来ない。

女癖悪そうな顔してる癖に、何処までもリリスに一途なんだよな、ナジュは。

「…女癖悪そうな顔って、どんな顔ですか」

そんな顔だよ。

「僕には、もうお姫様がいるので。あなたみたいなブスは願い下げです」

ブスは言い過ぎだと思うが。

「…」

理想の殿方候補から、ブス呼ばわりされ、かつナジュに恋をしても絶対に叶わないと聞かされ。

人魚姫は、眉間に皺を寄せてナジュを睨んだ。

ナジュは素知らぬ顔だったけど。

ナジュに恋をしても、絶対叶わないらしいぞ。

さぁ、どうする?

「そのような冷たいことを仰る殿方は、嫌いですわ」

そう吐き捨てて、結局ナジュも却下していた。

仕方ない。賢明な判断だ。

ナジュ相手に、1%でも恋が叶うとは思わない方が良い。

「では、次の花婿候補は…あなた方ですわね」

「え、僕?」

「俺達も入るの?」

今度は、令月とすぐりを品定め。

おいやめろ。こいつらは、まだ子供だぞ。

「お前、子供でも候補に入れるのかよ」

「理想の殿方に、年の差は関係ありませんわ」

お前は関係なくても、令月達は嫌だろ。熟女専でもない限り。

しかも、すぐりは。

「悪いねー。俺にはツキナがいるからさー。ツキナ以外を俺のお姫様にするつもりはないんだよね。選ぶなら『八千代』にしてよ」

とのこと。

そして、令月も。

「…僕も嫌だな」

特に理由を言う訳でもなく、願い下げ宣言。

生理的に嫌、ってことか?

まぁ、そりゃそうだ。

いきなり現れた自称人魚姫の、花婿候補に選ばれるなんて。

まるで童話の再現のような急展開。

子供はこういうストーリーを好きなのかも知れないが、現実だと、ただの無遠慮な奴にしか見えない。

「そうですわね…。さすがに、子供は頼り甲斐がありませんわね」

人魚姫の方も、令月とすぐりは、あまり好みではなかった様子。

頼り甲斐がないだって?

恐らく、ルーデュニア聖王国でもっとも頼り甲斐のある子供であろうこの二人を、「頼り甲斐がない」とは。

お前の目は節穴だな。