人魚姫は、俺の頭のてっぺんからつま先まで、じろじろと品定めするように見つめた。

…めっちゃ見てる…。

何なんだ?何見てるんだ?

「ふむ…。顔立ちは端正ですけど、いまいち…これといった魅力がありませんわね」

悪かったな、この野郎。

そうなのかもしれないが、それを本人の目の前で言うなよ。

デリカシーの欠片もないお姫様だ。

「わたくしはもっと、頼り甲斐のある、頼もしい殿方を求めているのですわ」

「あっそ。別にお前に頼られたくねぇから、勝手にしろ」

そう吐き捨てると、人魚姫は、もうこちらには興味なしとばかりにそっぽを向き。

「では、次はあなたですわ」

「えっ、ぼ、僕…?」

今度は、天音にぐいっと迫った。

またしても、天音の頭から爪先まで、じろじろ品定め。

無遠慮な奴。

「え、えーと…僕は…」

「ふむ…。あなたは、いかにも優柔不断そうで、頼りないですわね」

「…」

「なよなよしている殿方は、わたくし嫌いですわ。男の癖に恥ずかしくありませんの?」

「…」

…天音。

…お前は、この人魚姫を張り倒して良い。俺が認める。

「あなたは花婿候補にはなりませんわ。はい、次」

「天音…。お前は良い奴だからな。アホ人魚の言うことなんか、真に受けるなよ」

「うん…。ちょっと…いや、だいぶ傷ついたけどね…」

だろうな。

人魚姫に選ばれなかった者同士、良い酒が飲めそうだ。

いや、万が一選ばれたら、ろくなことにならなさそうだから…。選ばれなくて良かったのかもしれない。

勝手に言ってろよ。別にお前にモテる訳に生きてるんじゃねぇ。

すると、今度は人魚姫は、ナジュに狙いを定めた。

ナジュは選ばれるんじゃね?顔だけなら、この中では群を抜いてるし。

顔だけならな。

「…何で二回言うんですか?羽久さん」

顔が良くても、中身まで良いとは限らないってことだな。

皆、顔に騙されるなよ。

顔だけでパートナーを選ぶと、後で後悔することになるぞ。

「ふむ、あなたは…」

じろじろと、ナジュを品定めする人魚姫。

「なかなか悪くないですわね。ちょっと身長が低いのが玉に瑕ですけど」

おっ、なかなかの高評価。

…しかし今更だけど、花婿候補って、そんなスーパーで買い物するかのようなノリで決めるものだっけ?

あと、身長くらい別に良いだろ。何センチでも。

何で女性は、男性の身長をステータスの一種としてカウントするんだろうな?

自分のより背が低かったら嫌、とか?

体重ならまだ分かるけど、身長なんて、自分の努力でどうにかなるものでもなし。

低くても高くても、どっちでも良いと思うけどな。

なんかあんのかね?背が高いことで得られる魅力が。