…ごほん。

改めて。

「『オオカミと七匹の子ヤギ』の件が解決したのは良いが…。まだ、謎が残ってる」

忌々しい童話の魔法道具が大人しくなって、それで解決…だったら良かったんだか。

そうは行かないのが辛いところ。

「ベリクリーデさんのもとに現れた、子供の人影という奴ですか」

と、イレース。

…それだよ。

「ドッペルゲンガーに協力してたんだから…その子供は、僕達にとって敵…ってことになるんだよね」

天音が言った。

子供が敵、ねぇ…。

令月とすぐりのときに、嫌と言うほど子供を相手にして、さすがに懲りたよ。

もう二度と、子供と同じ土俵に立ちたくはないものだ。

「子供が一体、僕達に何の用ですかね?」

「…さぁな…」

一体どうやって、聖魔騎士団の隊舎に忍び込み。

どうやって、ベリクリーデを断絶空間に送り込んだんだか。

謎は深まるばかりである。

…そもそも、何でベリクリーデを狙ったんだ…?

「僕達も、毎晩学院の中を探ってるんだけど…。何も出てこないよね」

「うん。つまんないよねー」

と、元暗殺者組が言った。

お前ら…まだ深夜徘徊してるのか。

大人しくしてろって、何度言っても聞きやしない。

…と言うか。

「もうドッペルゲンガーは退治したんだから、深夜のパトロールは必要ないだろ」

「いやー、世の中何が起きるか分かんないよ?後になって、『やっぱり見張っておけば良かったー』ってことになっても遅いよ?」

正論を言うな、正論を。

もしそうだとしても、それをするのは大人の役目だ。

子供は黙って、夜は大人しく寝てろ。

「それに、まだ黒い影の噂はなくなってない」

…は?

黒い影って…。…それは、少し前まで学院を騒がせていた…幽霊騒ぎのことか?

「あれはもう解決しただろ?ドッペルゲンガーは全員退治したんだから…」

「僕もそう思ってたんだけど、でもそうじゃないみたいだよ」

何?

「生徒の中では、まだ噂になってるよ」

「…また見た奴がいるのか?」

「そうみたいだね」

…そんな、まさか…。

「噂が尾ひれをつけてるだけなんじゃないのか?」

ドッペルゲンガーは倒したのだ。もう、黒い影が現れる理由はないはず。

きっと、噂が噂を呼び、本当は見た者なんていないのに、見たという噂が広まってるだけ…。

「本当に噂なら良いんだけどねー」

「もしまだ出てるのだとしたら、あの黒い影は、どっぺるげんがーの件とは関係なかったことになるね」

…まさか、そんなはずは。

俺達が見たあの影は、確かにドッペルゲンガー…。

…だったのか?本当に…?

途端に、不安になってきたぞ。