そのまま、シファちゃんの後をついて電車を降り、しばらく歩くと。

ようやく、目的地である学校という場所に辿り着いた。

こんなに綺麗な家が立ち並んでいるんだから、きっと学校という場所も、さぞかし立派なんだろうと思っていたが。

「…あれ…」

…意外とそうでもなかった。

いや、これも充分、私が昔住んでいた場所に比べれば立派な建物なんだけど。

思ったほどじゃなかったって言うか…。

私の知る学校とは違っていた。

学校っていうのは、もっと大きくて…。

「?ベリーシュ、何してるの?早く行かなきゃ」

「う…うん…」

朝の時間だけで、もう何度シファちゃんに促されたことか。

シファちゃんが何かしら指示してくれなかったら、私は多分、未だに夢の中を彷徨っていたことだろう。

そして、シファちゃんが促すってことは…ここが、私の学校なんだろう。

学校…私が学校…。

全く覚えがないとは言わないが、何だか馴染みがない。

学校なんて、私…通ってたっけ…?

覚えてるような…覚えてないような…。

クリーム色をした校舎を前に、私はふと立ち止まって、校舎を見上げる。

…違う。やっぱりここじゃない。

本能的に、私はそう思った。

何の根拠がある訳でもない。記憶が残ってる訳でもない。

それでも、ここは違う。私の学校じゃない。

それだけは確かだと思った。

ここは私の居場所じゃない…。私の居場所はもっと…。

…しかし。

「…どうしたの?ボーッと立ち止まって」

シファちゃんに、声をかけられた。

それは…だって、ここは私の居場所じゃなくて。

「私、本当に…ここにいたっけ?」

「は?」

「違う気がするの…。私がいた学校は、もっと別の…」

私がそう言うと、シファちゃんはしばしポカンとして。

それから、ぷっと噴き出した。

「何々?現実逃避?分かるよ。今日の一限の数学、小テストあるもんね。私も現実逃避したいよ」

え、何の話?

現実逃避?小テスト?

違うよ。小テストが何なのかは知らないけど、私は現実逃避しようとしてるんじゃない。

むしろ、その逆。

現実を探そうとしてるんだ。私が居るべき現実を。

でも、シファちゃんには通用しなかった。

「現実逃避したって仕方ないからね。そんな暇があったら少しでもテキストを読んで、試験に備えようよ」

「…」

そう言われては、これ以上食い下がる訳にも行かず。

私は、見覚えのない校舎に入っていった。