シファちゃんの後を追って、ちょこちょことついていくと。

私は、さながら大蛇のような列車に乗り込んだ。

凄く大きい。それに天井が高くて、座席も綺麗だ。

屋根のない、無蓋列車に乗るのかなと思ったのに。

まさか屋根があるなんて…。贅沢な列車だ。

「ふぅ、間に合った間に合った…」

列車が動き出すと、シファちゃんはホッと一息ついたようだった。

…しかしこの列車って、何処に向かってるんだろう?

南?それとも東…?

「?ベリーシュ、さっきママにもらったサンドイッチ、早く食べなきゃ。時間なくなるよ」

「あ、うん…」

シファちゃんに促されて、私はサンドイッチの包みを取り出した。

…ママには悪いけど、実はお腹が空いてない。

最後にご飯食べたのはいつだったろう?

思い出せないくらい前なのに、ちっともお腹が空いてない…。

そもそも私は、お腹が空くという経験を味わったことが、そんなに…。

…。

…まぁ、でも、いっか。

「…あ」

サンドイッチの包みを開けて、ふと気がついた。

このサンドイッチ、あれだ。

えーと、何だっけ。教えてもらったんだよ、確か…。

「…ふぃしゅサンドだ」

そう、それそれ。

確か凄く美味しかったんだよ。お魚挟んだサンドイッチ。前に食べたことがある…。

…前…いつ食べたんだだっけ?

しかし、シファちゃんは。

「…?昨日の夕飯の残りを、パンに挟んだんじゃないの?」

怪訝そうな顔で、そう言った。

そうなんだ。昨日の夕飯…。

…その、昨日の夕飯の時間…私は、そこにいたのだろうか?

覚えていないだけで…。

「早く食べなよ。駅に着いちゃうよ?」

「…うん…」

もぐ、とサンドイッチを口に含む。

美味しい。凄く美味しいんだけど…。

…何だろう。前食べたときみたいな、心が浮き足立つような気持ちにはならない。

…前食べたのって、いつのことだっけ?

誰が作ってくれたんだっけ…。まさか自分で作った訳じゃないだろう。

じゃあ、誰が…?

私は前もこうして、その人と列車に乗ったような…。

その人と一緒に、何処に向かったんだっけ?何をしに行ったんだっけ?

列車の中で、どんなお話をしたんだっけ…?

…駄目だ、思い出せない。

これはあれだね、重症だ。

認めざるを得ない。私は多分…記憶喪失、って奴なんだ。