「朝ご飯食べてる時間ないでしょ?これ、電車の中で食べなさい」

そう言って、ママがラップに包まれたサンドイッチを手渡してきた。

…電車…?

…乗るの?

何処に行くんだろう。南の方かな…?

よく分からないけど、このシファって子についていけば良いんだろう。多分。

「ありがとう…」

「はい、元気で行ってらっしゃい」

「気をつけてな」

ママとパパに送り出されて。

私と、シファという女の子は、その家から出た。

家を出て振り向いてみると、やっぱり凄く大きくて綺麗なお家で。

わー、凄いなーと思った。

庭があるよ、お庭…。花が植えてある。

上流階級のお家って感じだ。

こんな家に住めたら、誰でも鼻高々だよね。

どうやらあのパパとママ、そしてシファちゃんは、凄く裕福ならしい。

それにしても、何で私は…あの家で目を覚ましたんだろう?

おまけに…まるで、家族みたいな扱いを受けている。 

私の方は、ちっとも覚えがないのに…。

「ほら、急いで。駅まで走らなきゃ間に合わないよ」

シファという女の子が、私を急かした。

あ、そっか…。電車乗るって言ってたっけ。

私は駅までの道なんて、ちっとも覚えてなかったけど。

シファちゃんが先を走って、自然と道案内してくれる形になった。

どの曲がり角を曲がっても、どのお家を眺めても、やっぱり何も思い出せない。

私がさっきまでいたお家が、特別裕福な家庭なのかと思っていたが。

どの家を見ても、凄く立派だった。

私の家と負けず劣らず大きいし、屋根壁もしっかりしている。

こんな家が、処狭しと立ち並んでいる。

壮観と言わざるを得ない景色だ。

もしかしてここって、高級住宅街…?