頭の中は疑問符でいっぱいだったけど。

私は女の人に促されるままに、どうにかこうにか、洗面所で顔を洗って寝室に戻る。

すると。

「あ、やっと戻ってきた。遅いよ」

その女の人は、相変わらずの呆れ顔で言った。

…えぇっと。

君、本当に誰なの?

全く見覚えがない…。

この人、もしかしてさっき、私の夢の中に出てきた人?

何だか変なこと言ってたよね。

何だっけ…。器がどうのって言ってた気が…。

…器?お皿?

何のお皿…?

首を傾げている私に、その人はハンガーにかかった服を手渡した。

…何この服。

「早く着替えなって。私まで遅刻しちゃうじゃん」

「…遅刻?」

今日、何か任務ってあったっけ?

…任務?何の任務?

「学校だよ。何だか忘れてるみたいだけど、今日は平日なんだからね」

そうなの?平日なのがどうかした…。

…え、学校?

私は妙に、その言葉が頭に引っ掛かった。

学校、学校…。…学校?

それは、私にとって神秘的な言葉だった。

だって私がこれまでいた場所では、学校なんて夢のまた夢…。

…だったっけ?

私、これまでの人生で学校行ったことなんてあったっけ?

「ほら、さっさと着替えて」

「…うん…」

納得は行かないけど、促されるままに、私は制服を手に取った。

…黒い。黒い制服だ。

V字型の独特な襟で、胸にスカーフがついてる。

これって何て言うんだったっけ…。…カーラー服?マーラー服?そんな名前だった気がする。

おかしいな。

私がいつも着る制服は、こんな黒い…濃い紺色っぽい色じゃなかったはず。

もっと白い制服で、左手に腕章がついてて…。

こんな安っぽい…カーラー服(?)じゃなかったはず。

何で私、こんな制服を着てるんだろう?

…変わったのかな?制服…。

白い制服を着ていた、あの組織…。

…あれは、何という名前だっただろう?

私はこれまで、何処にいたんだっけ?

今は?今は何処にいるの?ここは何処?何でこんなところにいるの?何の為に?

そして、さっきから私に偉そうに指図する…この人は誰?

何かもが、分からないことだらけだ。

それでも急かされるままに、私は黒い制服を身に着けた。

どうだろう。これ、この服、私に似合ってる?

返事をくれる人は、何処にもいないけど。

「じゃあ行くよ。はい、カバン持って」

女の人に、制服とお揃いの黒いバッグを渡され。

私は寝室を出て、階段を降りて一階に向かった。