――――――夢を見ていた。

また同じ夢。

いや…同じではないか。

夢の中は、灰色のモヤがかかっていた。
 
…ここは何処なんだろう。一体何の景色?

見覚えはあるはずなのに、思い出せない。

場面が、また移り変わる。

…ここも知ってる。…知ってるはずだ。

知ってるはずなのに、思い出せなかった。

ここも灰色のモヤが立ち込めていて、はっきりと見えない。

もっとはっきり見えたら、何か思い出すかもしれないのに。

場面が移り変わる。順番に、映画の切り抜きみたいに。

灰色のモヤに覆われて、はっきりと見えない景色。

だけど私は、ここを知っている。

モヤの隙間から見える景色に、既視感を覚えるから。

懐かしさすら感じてるから。

でも、戻りたいとは思わない。

ここは、一体何の景色?

知っているはずなのに、何故か思い出せな、

「…え?」 

移り変わった場面。

何処か高いところから、地上を見下ろしているような景色だった。

…これは何?

さっきまでは、思い出せないけど、何処かで見覚えがある景色ばかりだったのに。

この場所は…この場所を、私は知らない。全く記憶にない場所だ。

…どういうこと?

これは、私の未来の景色?

それとも過去なの?…でも、誰の?

…私の記憶じゃない…。

じゃあ、これを見ているのは。この景色を見ているのは。一体誰なの…?

そのときだった。

誰かの声が、私の耳に届いた。

「…神の器よ」

…え?

振り向くと、そこには灰色の人影がいた。

…今、私に何て言っ…。

「抵抗をするな。我が悲願は成就する。我が力を取り戻せば、この世界は…」

「…何言ってるの?」

「何も思い出す必要はない。神の器に、自我など必要ない…。無駄な抵抗はするな」

…この人、何を言ってるんだろう。

いや、違う。

この人は、人じゃなくて…、

「お前は…我のモノだ」

…違う。私は私のものだ。

この身体は、私だけの…ものの、はず。

…本当に、そう?

この身体は、本当に私だけのものなの?

だって私の中には…もう一人…。

…いや、もう一人…じゃない。

私の中には、もう二人、





「…いつまで寝てるの?早く起きなよ」

…誰かが、私を夢の中から引き摺り出した。