「…誰?」

暗がりに、うっすらと人影が見えた。

二人分の人影だ。

一人は、子供の背丈。

もう一人は…丁度、私と同じくらいの背丈。

私は、ゆっくりとベッドから起き上がった。

「…誰なの?」

もう一度尋ねてみる。

返事をしたのは、小さい方の人影だった。

「…折角楽しめると思ったのに、意外とすぐに消されちゃってさ」

…?

知らない人の声だ。

暗がりで、顔も見えない。

楽しめるって、消されるって、一体何のこと?

「最後の一人くらい、手を貸してみようと思ってね」

「…君達は誰?何をしたいの?」

子供の人影は、何も答えなかった。

代わりに、私の質問に答えたのは…傍らにいた、もう一人。

私と同じ背格好で、そして…。

…暗がりの中で、一瞬だけはっきりと見えた。

私と同じ背格好。

そして。

「私は…あなたになるの」

私と、全く同じ顔だった。




昼間ジュリスに聞いた、ドッペルゲンガー、という言葉を思い出したときには、もう遅かった。

「君はもう要らないからさ…消えてよ」

子供の人影が、ゆらり、と動いた。

強い腐敗臭が部屋の中に立ち込め、思わず吐き気を催しそうになったが。

次の瞬間には…私は、その場から消えていた。

抵抗する暇も隙もなかったけど。

ただ一つ、思ったことは。

ジュリスにまた、迷惑かけちゃうなぁ、ってことだった。