「…何だか強そうな名前だね」

必殺技っぽいよ。「必殺!ドッペルゲンガー!」みたいな。

敵倒せそう。

「ドッペルゲンガー知らないのか、お前…」

うん。

「それって、美味しいの?」

「食い物じゃねぇよ。都市伝説の類だが…要するに、幽霊、妖怪…まぁ、現実にはいない生き物だな」

幽霊に妖怪…伝説か。

「お化けみたいなもの?」

「そうだな。ただし…自分と全く同じ顔のお化けだ」

ほう。

私と、全く同じ顔の人?

私の脳裏に、一瞬、夢の中の出来事が思い浮かんだ。

私と全く同じ顔の人…か。

「一緒に遊んだら楽しそうだね」

「…お前と全く同じ人間がもう一人増えると思うと、頭が痛くなってくるよ。ベリクリーデは一人でたくさんだ」

あ、でも私じゃなくて、ジュリスがもう一人いたら、もっと楽しいかもしれない。

良いなぁ、ドッペルゲンガー。来てくれないかな。

同じ顔をしてる相手だもん。双子の妹が出来たみたい。

きっと仲良くなれるよ。

しかし、ジュリス曰く。

「それに、ドッペルゲンガーとは友達になれないぞ。奴らは本物に成り代わろうとしてるんだから」

「?」

「つまり、お前の偽物が、勝手にお前の代わりになろうとしてるんだ」

そうなんだ。

私のそっくりさんが、本物の私の代わりに…。

たまにやって来て、面倒なことを代わりにやってくれるなら、悪くないかもしれないけど。

いつもは…嫌だなぁ。

「その人は、どうやったら帰ってくれるの?」

「一応、ぶん殴れば消えてくれるらしいけど…その前に、本物かどうか見分けないとな」

成程。

私本物なのに、偽物と間違えられて殴られたら痛いもんね。

「もし私の偽物が出てきたらどうしよう。ジュリス、私が本物だって分かる?」

「心配するな。お前みたいなきかん坊は、世の中にお前しかおらん。お前の偽物なんか、すぐに見破ってやるよ」

やったー。良かった。

それなら安心だね。

「じゃあ、私もジュリスの偽物が出てきたら、すぐに見破ってあげるよ」

「そうか。そりゃ宜しくな」

これで、私達のドッペルゲンガーがいつ現れても平気だね。