「何してるの、ユメちゃん」

顔を上げると透明感のある白い肌と美しく整った顔があった。思わず見惚れてしまう。

「蛇目でお迎えうれしい?傘がなくて困ってると思ってたんだよね。来てよかったでしょ?ね?ね?」

目をキラキラさせて褒めて欲しそうにする成人男性。
いかん!綺麗な顔に騙されるところだった。

「嬉しいって…誰のせいでこうなったと思っているの」

彼は悪戯が成功したかのようにニヤッと笑うと、なんのことかな?と惚ける。

「カバンから傘を抜いたでしょ!で、私の傘はあるんでしょうね」

といって手を出すと、手を握られて、握手させられた。

「ねぇ、何してるの」

「ユメちゃんの傘はないよ?」

「はぁ?!じゃあ、何しに来たの!」

「言わせないでよ、一つの傘で一緒に帰るため♡」

そのまま手を引かれて強引に傘の中に入れられた。

なっ!?近いっ!?

儚げな雰囲気だが、身長は高いし、逞しい筋肉質な体つきを嫌でも感じてしまう。

耐えられなくて

「け、結構です!!」

と、スッと抜けた。

「えー、濡れたら風邪引くよ?風邪ひいたら優しい優しいお兄さんが看病してあげるけど、どうする?」

爽やかな笑顔の裏によからぬ何かを感じる。
ここは素直に相合傘を受け入れるしかないのか!

「ふ、不本意ながら、一緒の傘で帰らせていただきます!!」

「素直じゃないなぁ。まぁそういうとこも可愛いよね」

「うるさい!!」

素直になれないのはそういう意地の悪いことをするからだ。

この飄々とした態度も、思わせぶりな態度も気に入らない。いつも調子を狂わされる。
兄の友達であるこの人はいつも私を揶揄いに来る。

とはいっても、彼との相合い傘も彼のことも嫌いではなかったりする。

絶対に言わないけどね!