やがて顔を上げた新郎が、うつむき加減でポツリポツリと話し始める。

 「亜希と俺は、そもそも恋愛結婚とは言えないんです。ずっと昔から、子どもの頃から知っていて、家も近所で…。お互い恋人もいないまま27になって、親同士が、もうお前達結婚しろって。それでなんとなく、そうしようかって事になったんです。だけど俺、ここに来て、真菜さんに色々とお話してもらってるうちに、だんだん結婚式が楽しみになってきたんです。亜希のドレス姿も綺麗で、こんなに美人だったんだって思って…。俺は、結婚に迷いはなくなっていたんです。だけど、亜希は…」

 唇をぐっと噛み締めて、新郎は言葉を詰まらせる。

 「亜希は、そんな俺の気持ちを知らずに、勝手に妙な思い込みをしていたんです。ここで打ち合わせをしていると、俺が嬉しそうに真菜さんと話をする。それを見て、真菜さんに俺を取られるんじゃないかって。俺が真菜さんを好きになって、自分は捨てられるんじゃないかって。そんな事ある訳ないのに…。でもあいつ、どんどん妄想を膨らませていって、最後には酷い行動に出たんです。真菜さんに、不審な手紙を送り付けて、落ち込ませようとしたんです」

 真は、ちらりと真菜の様子をうかがう。

 ショックを受けているはずだが、真菜は毅然としたままだった。