「なあ、亜希。この写真に写ってるの、やっぱり亜希だろ?」
 「違うわ」
 「でも俺にはどうやっても亜希に見える。ほら、この帽子も、亜希が前に被ってたやつだし」
 「だから違うってば」
 「封筒、今返してもらったら?」
 「だから私じゃない」
 「でも困るだろ?返してもらえば?」
 「いらないわよ!カミソリなんて!」

 …えっ、と新郎が小さく呟く。

 「亜希、今、なんて…?」

 新婦が、ようやく事態に気付いたようにハッとした表情になる。

 「どういう事?だって封筒には、貴重品が入ってるんじゃないの?俺、お札か何かかと思ったのに、亜希、なんでカミソリなんて…」

 ガタッと立ち上がり、新婦は店を飛び出して行く。

 「亜希!」

 追いかけようとした新郎は、立ち止まって真を見た。

 「どうぞ、彼女の所へ。ゆっくりお話なさってください。後日、本社の齊藤までご連絡をいただけますか?」

 そう言って、テーブルに置かれたままだった名刺をもう一度差し出すと、新郎は受け取り、頭を下げてから急いで店を出て行った。