「先日、フェリシア 横浜でブライダルフェアがあったんですが、モデル事務所がダブルブッキングしてしまって、新郎新婦役のモデルさん達が来なかったんです。それで急遽私が新婦役をやって…」
 「あー!君、あの時の?」
 「はい、そうです」

 どうやら思い出してもらえたようで、ホッとする。

 「へー、なんか別人だな。全く気付かなかった」
 「それは、あの時のメイクさん、スゴ腕の持ち主でして…。あの、とにかく本当に助かりました。ありがとうございました」

 改めて頭を下げると、男性は、顎に手をやってじっと何かを考え始めたようだった。

 「あ、あの、何か?」
 「今回は、たまたまどうにかなったが、同じミスがあってはならない。その後、何か対策は?」
 「あ、はい。今までモデル事務所とは、電話でやり取りしたあと、確認の為FAXで依頼書を送っていました。そしてその内容でOKなら、了承のハンコを押してFAXバックしてもらい、それが届いた時点でやり取りは終了。あとは当日モデルさん達が来店してくれる流れでした。ですが今後は、前日に確認の電話をモデルさん本人に入れることになりました。入り時間や場所の確認も、直接本人とやり取りするようにと」
 「なるほど。それは本部にも報告してあるのか?」
 「そのはずです。店長が報告書をまとめていましたし、他店とも共有するとお話しされていました」
 「分かった」

 そう言って頷いた男性は、急にふと我に返ったように慌て始めた。