「真菜」

 ミーティングが終わり、ガヤガヤと皆が部屋を出て行く中、真は真菜に近付いて声をかけた。

 「真さん!お疲れ様です」

 にっこり笑う真菜を見て、なぜかとても懐かしい気持ちになる。

 「お疲れ様。色々、準備大変だと思うが、よろしく頼むな」
 「はい!私もとても楽しみなんです。素敵な結婚式になるように、精一杯頑張ります!」

 真は微笑むと、ジャケットの内ポケットに手を入れた。

 「真菜に、これを返そうと思って」
 「あ、シュシュ!ありがとうございます。わざわざすみませんでした」
 「いや」

 そして沈黙が広がる。
 何かを言いたいはずなのに、言葉が出て来ない。
 
 「じゃあ…また」
 「はい。また」

 結局、後ろ髪を引かれる思いで、真は真菜に背を向けて歩き出した。