「実はな、テレビ局から、撮影の許可が欲しいと連絡があった」
 「テレビ局から、ですか?」
 「ああ。朝の情報番組で、うちで挙式するあるカップルを密着で撮影し、内容が良ければ放送したいとの事だった。ただし、撮れ高が悪かったり、ご本人からNGが出れば放送はされないらしい。とにかくまずは、撮影させてもらえないか?との事だった」
 「撮れ高はともかく、ご本人からNGとは?事前に聞いてOKもらえないのでしょうか?」

 真が怪訝そうに言うと、それなんだがな、と社長は書類を見せてきた。

 「この挙式は、新婦のご両親が計画したサプライズウェディングなんだそうだ。本人達には当日まで内緒で、身内の方々がこっそりチャペルで待ち受けるらしい。その新婦の兄が、テレビ局で駆け出しのADをしていて、たまたまこの事を番組のディレクターに話したところ、おもしろそうだから、取り敢えず撮影しておけ、と言われたらしい」

 なるほど、と真は書類に目を通す。

 新郎新婦の名前や年齢、依頼主であるご両親の名前や連絡先、そして当日の流れなどが簡単に書かれていた。

 「日取りは6月16日…もうすぐですね」
 「ああ。それでな、我が社としては、是非とも放送してもらえたらと思っている。全国ネットで、視聴率もいい番組だしな。うちの良い宣伝になるのは間違いない。真、お前も直々にこの件を手伝ってやってくれないか?サプライズウェディングの成功はもちろん、良い映像が撮れるように、準備や当日のサポートもお願いしたい」
 「かしこまりました」
 「よろしく頼む。式場はフェリシア 横浜、担当は、入社4年目の齊藤だそうだ」

 えっ!と真は顔を上げる。

 「あ、齊藤と言っても、うちの親戚ではないぞ。たまたま名字が同じだけだ。なんと、漢字も一緒らしい。珍しいな」

 ははっと笑ってから社長は立ち上がり、頼んだぞ、と真の肩に手を置いた。