フロアーの電気を消し、足早に警備室に向かい、フロアーキーを預けて会社を出た。
冷たい風が直子を叩きつける。
「さむ…」
"早く帰りたい…"
その気持ちだけでいっぱいになり、表通りでタクシーを拾った。
──────…
会社から直子と誠の住むマンションまでは電車で一駅分離れている。
タクシーでは20分程かかる。
しかし、終電もなくなり最近はタクシーでの帰宅を余儀なくする。
マンションのロックを外し、エレベーターに乗る。
二人の部屋は二階だ。
202号室の鍵を開け、真っ暗な玄関に入った。
明かりを付けると眩しさに目を細める。