「和磨。和磨にとっては、もう私なんて過去の女なのかもしれない。でも……それでも私にとっては、まだ過去の事になんて出来ないでいるの。今も心の整理が出来ていないから。そんな和磨みたいにすぐに切り替えられないし、後悔ばかりして……無理なのに……。もう馬鹿みたいに、出来る事ならもう一度、和磨とやり直したいと思ったりもして……。和磨からしたら、何て勝手な女だって思うでしょうね。だから和磨には迷惑掛けたくないから……。でも……でもまだ忘れられなくて、過去の事になんて出来なくて、私は……好きだから、少しでも一緒に居たくて、好きでいちゃいけないってわかっているんだけど、でもいけないってわかってても、どうにもならなくて……」
馬鹿だ。何を言ってるんだろう。和磨に今更言ったところで、女々しいだけじゃない。
「珠美。もうやめろ」
両目を指先で押さえると、涙が手に滲むのがわかった。
「あっ……。私ったら何言ってるんだろう。ごめんね、和磨。もう行っていい?」
「お前は何も悪くないぜ」
和磨……。
「じゃぁ、勝手にまだ好きでいていいの?」
「……」
「和磨?」
「もう遅いんだよ、珠美」
遅いって、和磨?
「好きなだけじゃ、ただそれだけじゃ、もう突っ走れない年齢になったんだ」
和磨にはもう、きっと新しい彼女が出来たのかもしれない。椎名って子を私に勧めてみたり、もう遅いんだと拒絶されたり……。すがりついたりして馬鹿みたい。追えば逃げたくなるのが常。追いたくても追えないし、もう和磨を追うのはやめよう。自分が惨めになるだけだ。
「そうだね……和磨。そういう年齢なんだよね。ごめんね、引き留めて。それじゃ」
「珠美。話しもまだ途中だし、 コンビニ付き合ってやるよ」
「ごめん。もう無理だから……」
「待てよ、珠美」
和磨が私の腕を掴んでいる。お願いだから、もうそっとしておいて欲しい。
「離して!和磨。私達は、やっぱりあの時に終わっていたの。いつまでも引きずってるなんて、私らしくなかったわ」
「おい!珠美」
和磨の腕を掴む力が増した気がする。
「短い間だったけど、和磨……。本当にありがとう」
ずっとお礼を言うのを忘れていた。
「礼なんか言われる筋合いないぜ」
「いいのよ。私が言いたかった……だけだから。もう大丈夫。これからは和磨が家に来ても、前と変わらずに普通で居られるから」