「禁煙席と喫煙席のどちらがよろしいでしょうか?」
「禁煙で」
「生憎、ただ今、喫煙席のカウンター席しか空いておりませんで、喫煙席のカウンター席でしたらすぐご案内出来るのですが」
「別に構わないです」
「そうですか。では、ご案内致します」
喫煙席と言っても、殆どカウンター席にはお客さんが座っていなかったので、さほど煙たさは感じない。オーダーをして先にコーヒーを持ってきてもらって、読みかけだった本を 広げた。最近、電車の行き帰りしか読めないので、なかなか先に進まない。元々、推理小説が好きなのでだいたいがその手の本を読んでいるが、読み出すと先が気になって仕方がないはずなのに、近頃は家に帰るとボーッとしている事が多く、本を家で広げる回数がだんだん減ってきていた。今までは活字を追っていると、時として周りの音が聞こえないぐらい本に没頭している事がある。学生時代は、それで何度も電車を乗り過ごした事か……。
「ヨッ!」
掛け声と共にいきなり肩を叩かれた。活字にのめり込んでいたせいか、一瞬、何が起こったのかわからなかったが、すぐに我に返って叩かれた右肩の先を見上げた。
「珠美がこんな時間に、こんなところに居るなんて珍しいな」
「和磨……」
「誰?」
この子は知らない。
「あぁ、俺の前の彼女」
前の彼女って……。
「何?白石の前の彼女?マジで俺タイプなんだけど」
前の彼女って、和磨。もう新しい彼女が出来たの?
「ハハッ……。椎名のタイプなんだ。珠美。今フリーだろ?」
和磨?何でそんな事、聞くの?
「彼氏ぐらい居ますよねぇ?」
この子、いったい和磨のどういう友達?
「珠美。もう新しい彼氏、出来たのか?」
和磨。そっくりその言葉、返してあげたい。
「椎名が珠美の事、タイプなんだってさ。紹介してやるぜ?」
和磨。別れてからもずっと和磨の事、忘れた日なんてなかったのに。和磨と付き合った歳月は短かったけれど、私は……。
「珠美?」
「ごめん。帰る」
「お待たせしました。カルボナーラでございます。以上でご注文の品は、お揃いでしょうか?」
「はい……」
「ごゆっくりどうぞ」
店員さんが伝票を置いた途端、その伝票を握り締めてレジへと向かった。驚いた表情で店員さんがレジに飛んできた。
「あの……。何か不手際でも」
「あっ。いえ、ちょっと急用を思い出したので……」
「禁煙で」
「生憎、ただ今、喫煙席のカウンター席しか空いておりませんで、喫煙席のカウンター席でしたらすぐご案内出来るのですが」
「別に構わないです」
「そうですか。では、ご案内致します」
喫煙席と言っても、殆どカウンター席にはお客さんが座っていなかったので、さほど煙たさは感じない。オーダーをして先にコーヒーを持ってきてもらって、読みかけだった本を 広げた。最近、電車の行き帰りしか読めないので、なかなか先に進まない。元々、推理小説が好きなのでだいたいがその手の本を読んでいるが、読み出すと先が気になって仕方がないはずなのに、近頃は家に帰るとボーッとしている事が多く、本を家で広げる回数がだんだん減ってきていた。今までは活字を追っていると、時として周りの音が聞こえないぐらい本に没頭している事がある。学生時代は、それで何度も電車を乗り過ごした事か……。
「ヨッ!」
掛け声と共にいきなり肩を叩かれた。活字にのめり込んでいたせいか、一瞬、何が起こったのかわからなかったが、すぐに我に返って叩かれた右肩の先を見上げた。
「珠美がこんな時間に、こんなところに居るなんて珍しいな」
「和磨……」
「誰?」
この子は知らない。
「あぁ、俺の前の彼女」
前の彼女って……。
「何?白石の前の彼女?マジで俺タイプなんだけど」
前の彼女って、和磨。もう新しい彼女が出来たの?
「ハハッ……。椎名のタイプなんだ。珠美。今フリーだろ?」
和磨?何でそんな事、聞くの?
「彼氏ぐらい居ますよねぇ?」
この子、いったい和磨のどういう友達?
「珠美。もう新しい彼氏、出来たのか?」
和磨。そっくりその言葉、返してあげたい。
「椎名が珠美の事、タイプなんだってさ。紹介してやるぜ?」
和磨。別れてからもずっと和磨の事、忘れた日なんてなかったのに。和磨と付き合った歳月は短かったけれど、私は……。
「珠美?」
「ごめん。帰る」
「お待たせしました。カルボナーラでございます。以上でご注文の品は、お揃いでしょうか?」
「はい……」
「ごゆっくりどうぞ」
店員さんが伝票を置いた途端、その伝票を握り締めてレジへと向かった。驚いた表情で店員さんがレジに飛んできた。
「あの……。何か不手際でも」
「あっ。いえ、ちょっと急用を思い出したので……」