加納さんとお互い時間潰しのような他愛ない会話をしながら、今日の主役を遠巻きに見守っていると、何だかあの仲取り持ちおばちゃんの気持ちが、ほんの少しだけわかるような気がした。
「それじゃ。今日は、ありがとうございました」
気付けば待ち合わせの時間からすでに5時間が経過していて、あっという間の5時間だった気がする。
「それじゃ、また」
最初に待ち合わせた駅で2人と別れ、すぐさま朋美と作戦会議と反省会と称し、途中下車して居酒屋へと向かう。
「朋美。小林さんって人、どうだった?案外、楽しそうに話してたじゃない?」
「すいませ~ん。取り敢えず、生ビールと梅サワー1つ」
通りかかった店員に、朋美が飲み物をオーダーした。
「ん?まぁ……。初回にしては、あんなもんかな?」
エッ・・・・・。
「初回にしては……って、何それ。朋美?」
「珠美が、私は羨ましかったよ」
はぁ?
「加納さんと、楽しそうに話してたジャン」
楽しそう?
「全然。何言ってるのよ。加納さんと話してた事なんて、ありきたりの当たり障りのない事よ」
「そうなの?小林さんってさ。きっと優しいんだと思うけど、何ていうのかなぁ。こう……押しが足りないというか、ハッキリしないタイプなのかなって思えちゃってさ」
朋美。
「私の理想としては、グイグイ引っ張ってくれる人でないと駄目なのよ。一緒に悩んじゃったりとか、迷っちゃったりとか……。ほらっ、何食べる?って聞いた時に、何でもいいよとか言う男。そういうタイプは、NGなんだわ」
確かに居るな、そういう男。
「それは、私も無理かも。結局決められなくて、イライラしてきて適当な場所に入ったら入ったで、オーダーしてから中華が食べたかったとか言い出す男とかいるもんね。だったら最初っから言えよって」
言いたい放題の私達だって、きっとさっきの2人には酷い言われようかもしれない。
「私達の前途に幸あれ。乾杯!」
それからは、今日どんな話しをしたかとか。これからは、もう少し会う場所や画面に自分の要望をもっと事細かく入れようという結論に達し、最終的には反省会となって居酒屋を後にした。

「ただいまぁ」
「あらっ、お帰り。早かったのね」
そうだ。今日はもしかしたら遅くなるかもしれないと言ってあったから、私の遅くなるという時間からすると、今夜はいつもの時間より早かったのかもしれない。
「ご飯は?」