「割り勘だったんだって?でもいいじゃない。私はその方が楽だけどな。何か負い目に感じるのも嫌だし、長続きしないジャン?」
「嫌だ。浅岡なんかと、長続きなんかしたくないわよ」
こりゃ、相当ご立腹だな。
「そうそう。今度の土曜日に例の面通しするんだけど、もし良かったら一緒に来る?」
はぁ?
「朋美、何言ってるのよ。だってそれって形は違っても、お互いお見合いのような感じなのに、そこに私がのこのこ付いてったんじゃ台無しじゃない」
朋美ったら、全然主旨がわかってないよな。
「違うのよ。向こうからのリクエストで、見合って、見合ってじゃ、お互い素も出せないし 緊張するから友人を交えてって事なのよ。だから珠美も一緒にどぉ?雰囲気もわかっていいんじゃないかと思うし」
「そうなんだ」
でもいいのかな?私なんかで……。
「だったら由佳の方が美人だから、好感度アップなんじゃない?」
「それじゃ、私が霞むでしょ?」
はい?
「はい、はい。そうですかい。どうせ、私は引き立て役の太刀持ちですよ。朋美ったら、相変わらず計算高いねぇ」
「まぁね」
朋美がウィンクをしながら、私に微笑んだ。
「だから、珠美も練習のつもりでおいでよ」
練習ねぇ……。でも雰囲気もわかって、いいかもしれない。
「うん」
そして週末、朋美のお見合いシミレーション。練習のつもりで、付き添いで参加した。

「ねぇ、珠美。多分、あそこに立ってるのが、面通しの相手だよね?」
当日、朋美と一緒に待ち合わせ場所に向かい、目印となる結婚相談所に指定された赤の単行本を持って待っている男が前方に見え、その隣りの男と話している。
「そうじゃない?そんな赤の表紙の単行本なんて滅多に持ってる人いないだろうし、まして2人組だから間違いないよ。朋美、どうなの?画面で見たのと、同じ感じの顔?」
「う~ん……。同じと言えば、同じなんだけどぉ」
朋美が手に持っていた、パソコンからコピーした相手のプロフィールなどを書いた用紙の左上の画像は、およそ区別がつかないほどコピーが上手く出なかったらしく、顔の部分が 真っ黒になってるので、まるっきり誰だかわからない。
「朋美?」
何だか、朋美の様子がおかしい。
「私、通しの男より隣の男の方がタイプだよ」
はぁ?