たとえ、自分への恋慕の情が温度を失っていっても、慎吾は里穂や慎里をいきなりほうり出したりはしない。別れる時はきちんと告げてくれる。

「…………うん」

 里穂は覚悟を決めてお辞儀をした。

 頭を下げたのは真っ赤になった顔を見られたくなかったからだ。

 口説かれていると思うと、体の奥底から嬉しさが溢れてきて隠しきれない。

「……お世話になります」

 慎吾はにっこりと微笑んだ。

「ようこそ、我が家へ」

 大袈裟に小腰をかがめ、背に片手を回し、片手は胸のまえで敬意を表して見せる。
 あの時のフライマン・シンゴそのものだ。