「オッフロー、オッフロー。慎里、お母さんとお風呂入るの久しぶりだね?」

 はしゃいでみたのだが。

 この家に住むようになってからずっと慎吾が入れてくれた。……思い出すだけで、つんと鼻の奥が痛くなってくる。

 温かい湯に素肌がほぐされていくと、ささくれだっていた気持ちも柔らかくなっていくようだ。

「ねー、慎里はお風呂でどうやって遊んでるの? 教えて」

 湯が温くなっては追い焚きし、シャワーで遊び。慎里が腹をすかせるまで浴室で遊び倒した。

 バスタオルで息子を拭い、自身の水分も拭き取る。それから洗濯機を回した。

 泣いたまま風呂に入ったから、いつもなら持ってきている着替えを忘れていた。

「おとーさん、いないから。いいよね?」

 裸のまま我が子を抱いて、着替えを取りに子供部屋へ戻ろうとして……、なんの気なしに三人で使っている寝室に入った。

 足音を忍ばせ、ベッドに傍に立つと寝乱れたままのシーツにそっと母子で裸のまま横たわる。

「慎吾……」

 彼の匂いがする。
 温もりも残っているような気がして、里穂は目を閉じた。

 裸でシーツにくるまったのは、我が子を授かった日以来だ。

 やましいよりも、愛し合って命が自分に訪れてくれたことに、敬虔な気持ちになった。

 父親の匂いと母親の体温に抱かれて安らぐのか、慎里も大人しくしている。
 そのまま、二人で眠ってしまった。