大量に積んであった段ボール箱の中身を全部出して収納していく。

思っていたよりも細々とした物は少なくて、意外と早く終わってしまう。

……こんな感じかな。

一通り片付けが終わって、することがなくなってしまった私は、少し早いけどお隣さんに挨拶をすることにして、手土産を持って家を出る。
                                 * * *

私、佐藤麻織は高校入学と同時に家を出て、一人暮らしを始めた。

お父さんは反対していたけど、お母さんは少し安心していたように見えた。

まあ、しょうがないよね。

だって自分の子供じゃないのにどう接していいかわからないだろうし、赤ちゃんまで生まれたら私に構ってる暇なくなるもん。

別にお母さんが嫌いだったわけじゃないけど……。

私の本当のお母さんは、私が小学生の頃に病気で亡くなってしまった。

そして中学二年生の時に今のお母さんと再婚して、すぐにえりかが生まれた。

子供ができるのが早過ぎて、できちゃった婚かと思ったもん。

まあ、二人は本当に仲良しだしそんなことないんだろうけど。

          * * *

ピンポーン

最近交換されたのか、まだ真新しいチャイムを押す。

『はい……』

男の人……?かな?

「私、今日隣に引っ越してきた佐藤麻織です。ご挨拶に来たんですけど」

私がそう言い終わると同時に目の前の扉が開いて、高身長の男の人だった。

「わざわざありがとう」

その人は、寝起きなのかそれともくせ毛なのか、少しぼさっとした髪に丸メガネをかけていて、服はしわくちゃ。

……し、失礼だけど……ニート……?

「オレ、佐藤圭一|《さとうけいいち》。名字、一緒だね」

扉の隣にかけられているネームプレートを指さしながらそう言う佐藤さん。

「そ、そうですね……。あ、これ、つまらないものですが」

手土産のことをすっかり忘れていて、慌てて持っていた紙袋を佐藤さんに手渡す。