「でも、あの日からそうじゃないってことがわかって、嬉しかった。麻織は、とってもいい子なんだってわかって嬉しかった」

嬉しそうにそう言ってくれる圭一さん。

とっても嬉しいけど、同時に申し訳なくなる。

私はそんな子じゃないから。

私はただ、逃げているだけ。

「私の家、お母さんが小学生の頃に亡くなって、中学生の時にお父さんが再婚したんです。新しいお母さんはいい人だし、嫌いじゃないんですけど……えりかが生まれてから話すことも、一緒にいることも少なくなって、気まずくて、逃げてきたんです。そんな私が、いい子なわけありません……」

「ううん。麻織はいい子だよ」

潤んだ視界に、圭一さんの柔らかい笑みが映る。

「でも私、お母さんや、えりかから逃げて……」

「麻織がえりかちゃんのこと話す時、とっても優しい顔をしてたよ」

……っ!

「好きなんでしょ?お母さんのことも、えりかちゃんのことも」

「っ、はい……」

自分の口でそう言って、私は初めてお母さんやえりかのことがちゃんと好きだったことに気がつく。

「家族のこと、大好きなのに、悪い子なわけないでしょ?」

「ありがとう、ございます……」

「どういたしまして」

圭一さんが優しく頭を撫でてくれて、心の底から安心する。

「あ、それと」

え?

「俺、麻織のこと好きになっちゃった」

……えぇっ⁉︎