ピピピッ ピピピッ

枕元で鳴るアラームに私は手を伸ばす。もぞもぞ動いても智光さんは全然起きない。

「……智光さん、朝ですよ」

「……うん」

小さな返事は聞こえたけれどまったく起きる気配がなく心配になってしまう。大丈夫だろうかと顔を覗き込めば、重たそうに瞼が開いた。

「……朝は……苦手なんだ」

気だるそうにつぶやきながら、また瞼が閉じていく。
別々で寝ていた時には気づかなかった智光さんの意外な一面。

「……起こして」

そんな風に甘えてくる智光さんも初めてで、なんだか可愛らしいとさえ思えてしまう。

「……しょうがないですねぇ」

ぐっと腕を引っ張れば、智光さんはのそりと起き上がりそのまま私の肩に顎を乗せた。

「わあっ」

「……おはよう、やえ」

「お、おはようございます。えと、昨日は遅かったんですか?」

「……ん、まあ」

歯切れの悪い智光さんはそのまま寝てしまいそうで、この人はいつもどうやって起きていたのだろうかと疑問に思う。

だって誰よりも早く会社に行って掃除とかしているのに……。
まあ、今もまだだいぶ時間に余裕はあるけれど。

「……さっきのこと、覚えてますか?」

「いや? 何かあったか?」

「……キス……しました」

「……」

たっぷり一呼吸おいたあと、智光さんは顔を上げる。

「……俺から?」

「そうです」

信じられないとでもいったように智光さんの顔が険しくなる。
そんな表情を見て、やっぱり寝ぼけていたんだという気持ちと、ちゃんと拒まなくてごめんなさいという気持ちが交錯した。

私なんかとキスしちゃって、迷惑だったよね。