翌朝心地よさに目を覚ませば、腰に重みを感じて疑問に思う。
何だろうと体を捻ると、超至近距離で智光さんの顔があり、思わず飛びのきそうになった。けれどガッチリホールドされて身動きが取れない。

動揺して焦っているのは私だけで、智光さんはすうすうと柔らかな寝息を立ててまったく起きる様子はない。

どうしよう……。

ドキドキと心臓の音だけが高まっていく。
智光さんが何時にベッドへ入ったのか全く知らないけれど、同じベッドで寝ることはやはり確定事項だったらしい。

ていうか、私は端の方で寝ていたはずなのに、どうして智光さんの方へ寄っているの?

ドキドキしながらも智光さんの寝顔をまじまじと見つめる。

長い睫毛や通った鼻筋。
なんて綺麗なんだろう。

こんな風に抱きしめられて、まるで本当の夫婦みたい。本当の夫婦になれたらいいのに……。

私は智光さんが寝ていることをいいことにそっと身を寄せた。

少しくらい、いいよね?

智光さんに包まれていることがとても安心する。
大好き、智光さん。

「……やえ」

小さく呼ばれてハッと顔を上げた。
やばい、起こしちゃった、と思ったのも束の間――。

「むぐっ」

一瞬何が起きたのかわからなかった。
柔らかな感触が唇から伝わってくる。

これは――き、キ……ス……。
ど、どうして?
智光さん、寝ぼけてる?

「智光さん」と名前を呼ぼうとした瞬間、あたたかい舌がするりと入ってきて頭が真っ白になった。口内を優しくなめまわされ、どんどん力が抜けていく。

「ふあっ……」

漏れ出た吐息が自分のものではない気がしたけれどまぎれもなく自分の声で――。