「……朝からやえの笑顔が見られて安心した。よく眠れたか?」

「はい、お布団もふかふかでぐっすりでした」

「顔色は良さそうだが、もうしばらく休んでもいいんだぞ?」

「そんなわけにもいきません。もう、すっごく元気です! 早く敦子さんたちにも会いたいですし、仕事も頑張らないと」

入院含め一週間ほど休んでしまったので、皆さんには迷惑をかけている。頑張って取り戻さなくちゃ。

うんうんと頷いていると、ぽんと頭を撫でられる。

「やえ」

低く甘い声に顔を上げる。

「体は元気かもしれないが、俺はやえの心を心配している。大丈夫なのか?」

伺うように見つめられ、体の奥がきゅんと震えた。
気遣ってくれるのが嬉しくて涙が出そうだ。

でも大丈夫。
だって智光さんが助けてくれたんだもの。
私は頑張れる。
頑張って生きていける。

「……大丈夫です。もう絶対死ぬなんて言いませんから」

「わかった。約束だからな」

大きく頷けば智光さんは私の頭をもうひと撫で。
心地良くてたまらない。
ずっと触れていてほしいとさえ思う。

だけどそれ以上は触れてくれなくて。

……って、当たり前だ。
私ったら何を期待しているんだろう。

勘違いしちゃダメ。
智光さんは慈悲で結婚してくれるんだから、深みにはまったら抜け出せなくなる。
智光さんの幸せのためにも、私は早く自立して一人でも生きていけるように強くならなくちゃ。

「じゃあ、コンビニ寄ってから出勤するか」

「はい!」

元気よく返事をしたら笑われてしまった。
コンビニごときで大喜びしている私にツボったらしい。普段クールな智光さんが笑ってくれるのが嬉しい。

もしかしたら呆れて笑われているのかもしれないけれど、智光さんの笑顔が見られるならそれも有りかなって思った。

それくらい、心に余裕がある。