「あの、叔父さん叔母さんのことなんですけど」
「ああ」
「私が結婚するって言ったら何て言うか……」
「そんなことを気にしていたのか?」
「だって、今だって無断で家を出てきているわけですし」
家事も放棄して怒っているだろうか。
恩を仇で返すなと叱責するだろうか。
考えれば考えるほど不安になっていく。
無意識に智光さんの手を強く握ってしまっていたらしい。智光さんが慈しむように撫でてくれる。
くっと肩が引き寄せられ、ポスンと智光さんの胸におさまった。
一瞬何が起きたかわからなくて「ほえ?」と間抜けな声が出る。抱きしめられていることを実感するにしたがって全く違う鼓動に変わり、ドクンドクンと落ち着かない。
「やえは何も心配しなくていい。後始末は俺がする。だけどそうだな……やえの優しい気持ちを慮って、一応筋だけは通しておこうか」
「え、えっと……」
「きちんと挨拶に行く。ついでにやえの荷物も引き取ってこよう」
「はい。……あの……えっと……」
真っ赤になる私を見て智光さんはおかしそうに眉を下げた。
「これから夫婦になるのだから。これくらいのスキンシップはあって当然だろう?」
あまりにも涼しい顔で言うので、そうなのかな、なんて納得しかけたけれど。
いやいや、だって智光さんは慈悲で私と結婚してくれるだけなんだから、そんなっ、そんなっ。
だけど緊張に何も考えられなくなった私は成り行きに任せて「はい」と返事をしていた。