「……見てます」
正直に言えば智光さんは横目でチラリとこちらを見る。運転をしているから一瞬だけだったけれど。
「そういうのはいっさい抜きにしよう。俺たちは結婚するんだから。まあどっちにしろ、社長なんてのは肩書だけで、俺はつまらないただの男だよ」
「つまらなくないです。智光さんは優しくて社員想いで、みんな智光さんのことが大好きなんですから」
ぐっとシートベルトを握りしめる。
私が智光さんを過大評価しているんじゃなくて、智光さん自身が自分を過小評価している気がする。
本当に、智光さんは素敵な人なんだから。
「やえも俺のこと好きだと思ってくれているのか?」
「はい、もちろん私も智光さんのことが好――」
会話の流れで勢いよく口にしたものの、もしかして私ってば今とんでもなく恥ずかしいことを口にしているんじゃ……?
「ん?」
「あ、えっと……す、好きですよ?」
ああ、顔から火が出そうだ。
そう、えっと、智光さんの元で働く社員として智光さんが好きって意味で――。
「そうか。ありがとう」
ニッコリと微笑んだ智光さんはとんでもなく色っぽく魅惑的で、ドックンと心臓が痛いくらいに速くなっていく。
どうしよう、どうしよう。
私、智光さんのことが好きだ。
社員だから、じゃなくて、一人の男性として。
ごまかしようのない気持ちは膨れ上がるばかり。
収まらない胸のときめきを抱えたまま、車はファストフード店に着いた。