「あっ!」
「どうした? 思いついたか?」
「あ、えっと……ファストフード店に行きたいなって」
思いついたけれどあまりにも智光さんに似合わなさ過ぎて、今の発言を撤回したくなった。
だって社長が私に付き合ってファストフードだなんてありえない。もっとおしゃれなレストランとかバーが似合いそうなのに。
けれど智光さんは「じゃあそうしよう」と否定することなく私を助手席に乗せる。
「い、いいんですか?」
「ダメな理由がどこにある?」
「智光さん、ファストフード店行ったことあるんですか?」
「あるよ。まあ、頻繁に行くことはないが」
「そうなんですね」
それならよかったと、ほうっと胸を撫で下ろす。
「やえ」
「はい」
「なんとなくだが、俺のことを過大評価していないか?」
「はい?」
「俺が社長だからって特別な目で見ていないかということだ」
うっと言葉に詰まった。
だって智光さんは社長で人望も厚くて立派な人。それにとんでもなくかっこいい。これを特別な目で見ない方がおかしいというものだ。